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すっかり冷たさが馴染んでしまった指先を窓から離すと、私は親友を振り返った。
それから最後にもう一度、やっぱり名残惜しくて窓の向こう側に向き直る。
その瞬間。本当に一瞬だけ彼がこちらを見たような気がした。嬉しさに、自然と口元が綻ぶ。
「どうしたの?」
「何でもない」
心がじんわりとした温かさで満たされていくのを感じながら、小さく首を横に振る。
雪を全部振り払った彼が、笑いながら友達とベランダのドアの向こうへと消えて行く。
窓の外では、今年初めての雪がまだずっと降り続いていた。
Fin.
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