異世界に飛ばされた俺のポケットは百円ショップとつながっている

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 ★  気づくと俺は薄暗い森の小道に横たわっていた。地面がくり抜かれたように、俺の身体の形に合わせて凹んでいる。不自然だと思い身を起こして周囲を確かめる。見たこともない場所だった。  小道の奥から冷たい風が吹いてくるのを感じた。さらに草をかき分ける音がして、何者かが全速力でこちらへ向かってくる。 「はっ、はっ……」 「ウジュルル……ウガアアァァァ!」  すると肌の白い少女が剣と盾を構えた生き物に追われていた。  少女は靴を履いておらず、スカートは泥で汚れていた。しかも振り乱す白銀の髪から覗く耳は長く、人間のものとは思えなかった。  魔物は二体。二本足で走る、大きな犬のような魔物だ。  ――まさか異世界なのか!?  少女は俺の姿に気づくと、すぐさま背後に身を隠した。 「そこの人間、ちょうどよかった! お願いがあるの!」 「はぁ!? 俺なんにもできないぞ! ってかあいつらなんなんだよ!」 「ダークエルフの兵隊、コボルドよ! 村が襲われて逃げてきたの!」 「まじか!」  俺を援軍だと思って警戒したのか、姿を確認するやいなや足を止め、じりじりと距離を詰めてくる。 「ウジュルウジュル、腹へっタ。……アネス様は言ったネ。逃げ出した奴は捉えテ喰ってもイイと」  ここは冗談抜きで異世界だったっぽい。 「引きつけて一発で片づけるから、すぐにあたしを連れて逃げて!」 「はぁ!?」 「だってあたし、魔法を放つと三分間、気を失っちゃうのよぉぉぉ!」  少女はドボドボと涙を流しながら背中に回り込み、両手で俺を突き飛ばした。よろけて前のめりになると、二体のコボルドがいっせいに襲いかかってきた。  ――『木々の矢嵐を降らせる魔法(ユーグレイラ・ソフランメ)!』  すると頭上の木々がざわめいて枝葉をコボルドに向ける。葉が鋭く変形し、豪雨のように相手に襲いかかった。 「ギャインギャイーン!」  一体のコボルドが攻撃を受けて逃げてゆく。しかしもう一体のコボルドは身をかわして攻撃をかいくぐった。 「やばっ、倒せてないぞ!」 「はうぁ~」  後ろを振り向くと少女は魂の抜けた顔でその場に倒れ込む。  ――これ、一撃で倒せなかったら詰んじゃうパターンじゃん!  そう思った瞬間――魔物の動きがぴたりと止まる。木々のゆらめきも、はたと消えていた。時間が止まっていたのだ。  脳内で聞き覚えのある声が響く。 『ふおっふおっふおっ、生きていて幸いじゃったわい』 「だっ、誰だっ!?」
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