異世界に飛ばされた俺のポケットは百円ショップとつながっている

4/10
前へ
/10ページ
次へ
★ 「はぁ、はぁ、はぁ……」  どうやら魔物を巻けたようだ。足を止めて抱えた少女を下ろす。 「ありがとう、助かったよ。でも珍しいね、こんなところに人間なんて」 「っていうか、こんなところってどんなところだよ」 「はぁ? アリエスの森、それも深層部。ひとりでここにたどり着けるなんて、あなたはただ者じゃないのね」  少女は俺の腰のあたりをまじまじと眺めて言う。 「ははーん、さてはその光るポケットが強さの秘密なのかぁ」 「いや、どうやら百円ショップとつながっているらしいんだ」 「なにそれ?」 「まぁ、こことは別の世界にある、創意工夫を込めたアイテムの宝庫ってとこかな」  目を見開いて驚いた顔をする少女。 「異世界って――まさかあの、神が啓示した異世界の救世主様!?」 「はぁ? 誰だよそのテキトーなこと言う神って」 「ギャンドゥー神のことよ。知らないの?」  ああ、あの声もそう言っていた。まさかほんとに天啓だったとは。 「知っている。ってか、ついさっき知った」 「ほらー、知っているんじゃない!」 「でもなんで救世主が必要なんだ?」 「村がダークエルフに襲われたから、神に貢物マシマシでお願いしたの。そうしたら、『じゃあ異世界から救世主を送ればいいのね。りょっ!』っという崇高な天啓があって――」  さてはあのギャンドゥー神、死にかけた俺に救世主のふりをさせて体裁を繕ったな!? 「救世主は言えばなんでもやってくれるから、って神はおっしゃっていたわ。だからお願いがあるの!」 「それってもしかして……」 「乗っ取られた村からダークエルフを追い払って、仲間たちを助けてほしいの!」  ……だよね。そういう展開になる気はしていたんだけどさ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加