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「はぁ、はぁ、はぁ……」
どうやら魔物を巻けたようだ。足を止めて抱えた少女を下ろす。
「ありがとう、助かったよ。でも珍しいね、こんなところに人間なんて」
「っていうか、こんなところってどんなところだよ」
「はぁ? アリエスの森、それも深層部。ひとりでここにたどり着けるなんて、あなたはただ者じゃないのね」
少女は俺の腰のあたりをまじまじと眺めて言う。
「ははーん、さてはその光るポケットが強さの秘密なのかぁ」
「いや、どうやら百円ショップとつながっているらしいんだ」
「なにそれ?」
「まぁ、こことは別の世界にある、創意工夫を込めたアイテムの宝庫ってとこかな」
目を見開いて驚いた顔をする少女。
「異世界って――まさかあの、神が啓示した異世界の救世主様!?」
「はぁ? 誰だよそのテキトーなこと言う神って」
「ギャンドゥー神のことよ。知らないの?」
ああ、あの声もそう言っていた。まさかほんとに天啓だったとは。
「知っている。ってか、ついさっき知った」
「ほらー、知っているんじゃない!」
「でもなんで救世主が必要なんだ?」
「村がダークエルフに襲われたから、神に貢物マシマシでお願いしたの。そうしたら、『じゃあ異世界から救世主を送ればいいのね。りょっ!』っという崇高な天啓があって――」
さてはあのギャンドゥー神、死にかけた俺に救世主のふりをさせて体裁を繕ったな!?
「救世主は言えばなんでもやってくれるから、って神はおっしゃっていたわ。だからお願いがあるの!」
「それってもしかして……」
「乗っ取られた村からダークエルフを追い払って、仲間たちを助けてほしいの!」
……だよね。そういう展開になる気はしていたんだけどさ。
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