異世界に飛ばされた俺のポケットは百円ショップとつながっている

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★  ダークエルフ――褐色の肌を持つ彼らはエルフと似て非なるもの。暗黒魔法を駆使して他の種族を襲ったり、あるいは裏の組織に属して暗躍したりする厄介者らしい。 「それじゃ救世主ヨナ、襲われた村まで案内するからついてきて!」  なるほど、ギャンドゥー神が「社畜」を求めていたのも理解できる。なんでも言うことを聞く便利な存在をご所望だったということか。  彼女――メイサというエルフの少女は警戒しながら森の小道を進む。  メイサの後に続いてゆくと村の裏口に出た。森の中に広がる荒地に平屋の家が立ち並んでいる。あたりはすでに薄闇に覆われていた。村は見張りのダークエルフが数人、うろうろとしている。入れ替わり立ち替わり、小屋に出入りしていた。明るく光る窓では多数の人影、いや、エルフの影が行き来する。なにが行われているのか知りたいが、距離が遠くて中はよく見えない。 「メイサ、なにがおこなわれているか見えるか?」 「うーん、遠くて無理……」 「エルフっていっても目がいいわけじゃないんだな」 「このとおり、耳は人間よりずっといいんだけどね」  耳をぴくぴくと動かすメイサ。 「もっと近づければいいんだけど……」  そこで俺はふと思いついた。ポケットに両手を突っ込み目当ての物を探し出す。  じゃじゃん! なんでも視える『ルーペ(大)』と『ルーペ(小)』! 「これはものを大きく視えるようにするレンズさ」 「すごーい! なんでそんな魔法が使えるのよ!」  メイサはそれを手に取り、近くの草葉を眺めてしきりに感心する。けれどルーペをかざして遠くを見ても風景はぼやけるだけだ。 「って、これ近くだけしか効果ないじゃん!」 「だからふたつ必要なんだよ」  両手にルーペを持ち、大きいルーペを持つ手を伸ばす。小さいルーペは目の前に掲げて照準を重ねてピントを合わせる。屈折式望遠鏡の原理だ。  ピントが合った瞬間、拡大された小屋の中がガラス越しにはっきりと見えた。数人のダークエルフが陣取ってふんぞり返り食事を堪能している。きっと奪ったやつだ。  しかも、エルフたちが縛られて一箇所に固められている。 「ちょっと、あたしにも見せて!」 「はいよ」  俺はピントを合わせた状態で彼女の背中から腕を回し、ふたつのルーペを構えて調節する。 「おおっ、すごい魔法! ほんとうにおっきく視えるよ!」  魔法じゃなくて物理現象なんだけどね。
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