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ただ、見ていて気づいたことがある。それはダークエルフの服装や紋章がまちまちだということだ。それはこの軍が、寄せ集めの集団であることを意味している。顔見知りばかりではないということだ。
もしも変装したら、中に紛れ込むことができるかもしれない。
「よし、ちょっくら潜入捜査してくらぁ!」
「えっ、それは無理なんじゃない? 見た目でばればれだよ」
「まぁ、神から授かった力をなめんなよ! ――いでよ、百円アイテム!」
じゃじゃん! 『仮装シリーズ第15弾、即席エルフのつけ耳』!
ハロウィンパーティー用に仕入れたやつだが、エルフが出てくるアニメが人気だから採用した新商品。売り出し中でめっちゃラッキーだ。
じゃじゃん! 『ブラウンマックス・ガングロファンデーション』!
懐かしのブーム商品企画で一瞬売られたのはナイスタイミング。露出した顔や手足だけでなく、つけ耳にもファンデーションを塗り込む。
「これで今日から俺はダークエルフ!」
「すごいクオリティね! でも服装が駄目だわ」
「それならここは――いでよ、強そうな百円アイテムよ!」
じゃじゃん! 『万能黒ゴムハンマー』!
「よし、攻撃アイテムを入手したぞ! 悪いけどひとり、犠牲になってもらおう!」
俺はポケットの中から取り出したそれをメイサに手渡す。メイサは真剣な表情になり、ハンマーを無言で受け取った。俺の意図を察したようだ。
見張りのひとりが近づいてきたところ、俺が姿を現して手招きする。
「同志よ、ちょっとこっちへ来てくれ」
「む? 見たことのないやつだな。新顔か?」
「まあな、この世界でも新顔って言うべきかな」
「はぁ?」
その瞬間、足音を消したメイサがダークエルフの背後から現れる。
――ゴンッ!
ハンマーを構えてダークエルフの頭をあらん限りの力で殴りつけた。白目を剥いて倒れるダークエルフ。
「よくやった、メイサ!」
「どうだ、見たかざまみろ!」
茂みに引きずり込み、身ぐるみはいで手に入れた服を俺が着用する。これで遠巻きに見る分にはダークエルフと遜色ない、完璧な変装だ。
「ちょっと待って! もしもこいつが目を覚ましたらまずいんじゃない?」
メイサは横たわるダークエルフを指でさして不安そうな顔をした。たしかに目を覚まされたら、俺らの存在を仲間に知られてしまう。けれど口封じなんて恐ろしいこと、俺にはできっこない。
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