異世界に飛ばされた俺のポケットは百円ショップとつながっている

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「じゃあ、どこかに縛りつけておくか」 「それは無理よ。ダークエルフは魔法で自然界のものを自由に操れるもの。草の蔓なんて簡単に解いちゃうわよ」 「そうなのか……」 「だから、こいつはあたしが始末して――」  メイサは口元を引き結び、覚悟を決めた顔でハンマーを振り上げる。俺は慌ててその腕を止めた。 「ちょっと待て! 寄せ集めの軍ってことは、こいつは雇われただけの兵隊かもしれない。死なせちゃだめだ!」 「じゃあどうすればいいのよっ!」 「それなら――そうだ!」  俺は妙案を思いついた。すかさずポケットをまさぐる。  じゃじゃん! 『結束バンド』と『万能ふきん』!   「この『結束バンド』は人間が合成した、自然には存在しない物質で作られたものなんだ」 「なるほど、それなら魔法は効かないはず。――でも、こんなにか弱そうなので大丈夫?」  メイサは怪訝そうな顔で結束バンドを手に取って引っ張る。 「んっ、むっ――あれ、ほんとに切れないや! すごい!」 「へんっ、百円パワーを甘く見るなよ!」  メイサはダークエルフの手足を木の枝に縛りつけながら、「引っ張っても緩まないのすごーい!」と感動していた。百円アイテム、侮りがたし!  あとは『万能ふきん』を口の中に詰めておいた。これで万全だ。 「小屋の状況を確認したら小声で伝えるから」 「へ? いくら耳がいいからって、あそこから小声で話されたって聞こえないよ」 「へへーん、そんなときにはこれさ!」  じゃじゃん! 『紙コップ』、『セロテープ』、そして『裁縫糸』!  俺は紙コップをふたつ取り出し、その裏を糸でつなぐ。それらを組み合わせて糸電話をこしらえた。 「糸をぴんと張って話せば、どんなに遠くても声が届くのさ」 「すっごーい! さすが救世主の魔法!」  驚いてぽっかりと口を開けるメイサ。これも魔法じゃないんだけどね。
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