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「じゃあ行ってくらぁ!」
俺は紙コップを手にして小屋へと向かう。堂々と歩いたせいか、誰も俺を気に留めなかった。着くと建物の陰に身を隠し、窓から覗き込んで聞き耳を立てる。
するとエルフたちが縛り付けられ、一箇所に固められていた。皆、くすんくすんと悲し気に泣いている。床には青白く光る魔法円が描かれていた。
「アネス隊長、こいつらをどうしますか?」
「そりゃあオメェ、根こそぎ首を切り落とし、魔法円を通じてダイソン様に捧げるのよ。さらなる魔力を与えていただくためにな!」
「ではその恩恵、私も享受させていただいてよろしいでしょうか」
「みずから喜んで血に染まるとは、おぬしも悪よのう」
「アネス隊長ほどではございません」
「「くっくっくっ……」」
――やべえぇぇ、こいつらやばすぎるうぅぅ!
血も涙もないダークエルフたちの計画に背筋が冷たくなる。するとやつらはナイフを取り出してじりじりとエルフたちに詰め寄った。恐怖の叫び声が上がる。
のっぴきならない状況に、すかさず糸電話でメイサに連絡を入れる。
「エルフたちがまずい!」
「えっ!? じゃあ、あたしはどうすればいのっ!」
「俺が引きつけるから、魔法でいっぺんに片づけてくれ!」
「それ無理! 救世主なら救世主らしくあっさり片づけなさいよー!」
力んだせいか、糸がぶつりと外れた音がした。
もう待っていられない。俺は腹をくくって小屋の扉を開け、中へと飛び込んだ。
「ちょっと待ったぁ!」
「はぁ? 誰だおめぇ!」
ポケットから『魔法の杖』を取り出して構えていたが、どこまで通用するのか――。
「俺は異世界から舞い降りた救世主ヤスイ・ヨナ! 崇高なエルフを虐げるその残酷マインド、悔い改めてもらおう!」
――中二病の俺の意気込みが通じますように。
「深淵の闇より出でし悪魔の化身ヴェルネウスよ! 轟音を響かせて敵の心臓を破壊せよ!」
パアアァァァン!!
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