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事の起こりは、四時間ほど前。
大学時代から付き合いがある相馬亜里沙と、仕事終わりに待ち合わせて、私の部屋で鍋パーティーをした。
「私が具材を切ろうか?」
準備中。包丁を使う手つきが危うい私に、亜里沙がさりげなく声を掛ける。
「大丈夫、大丈夫……あっ!」
大根のかつらむきが上手く出来ず、ゴトリとまな板に落としてしまった。
「やっぱり私がやるよ。貸して」
亜里沙は料理下手な私に呆れることもなく、爽やかな笑顔で交代してくれる。
器用に包丁を扱う彼女を見て、私は感嘆のため息を漏らした。
「亜里沙、カッコいい……!」
「こんなの、慣れだよ。佳奈は食器の準備を頼むね」
「うんっ!」
私たちの関係は、学生の時からずっとこんな感じ。
切りっぱなしのボブヘアとマニッシュな服装がよく似合う亜里沙は、オールマイティーなカッコいい女の子。
対する私は、どこにでもいる平凡な人間だ。背が低く童顔で、動きがトロい。大学の課題や仕事の悩み相談、鍋料理ですら彼女に頼りっぱなし。
大学の入学式で隣の席だったってだけの縁が、こうも長く続いているのは本当に幸せだ。
この先何があったとしても、ずっと友達でいられたらいいな。
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