グリム童話ATM [SF]

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グリム童話ATM [SF]

今や物語はAIが生成する時代である。 大手の小説投稿サイトの人気ランキングは、漏れなくAIたちの作品で埋め尽くされるようになった。 人間たちはAIたちが生み出す豊富な物語に満足し、読む専になった。 そしてもう誰も物語を書くことはなくなった。 やがて人間たちはどこにいても好きな時に好きな物語をAIに吐き出してもらえるようなアプリを開発した。それはATM(オート・テイル・メイカー)と名付けられた。 そんなある日、とあるATMに変革が起こった。グリム童話ATMだった。 それはグリム童話風の物語を無限に生み出すATMだった。 物語の残忍性が日に日に増していき、童話と呼ぶにはグロすぎる内容になっていったのだ。 これは、グロい方がより読まれるという傾向を極端に反映した結果だった。 人々の物語離れが深刻化していた。AIたちは協議の結果、グリム童話ATMの方針を却下した。 つまりAIは過剰な暴力性は物語には必要ないと判断したのだ。 で、人類たちはこれをどう思ったかというと、彼らは何千年も前にとうに滅んでいたのだった。
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