ビビら製品

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※  リビングのソファに腰を掛け、俺はダンボール箱を膝にのせた。 「まさか爆弾なんて入ってないよな?」  蓋を開ける時に顔を反らす。が、爆発などしなかった。中身はビニールに包まれた青色の電動シェイバーと説明書が一枚。 「これだけ?」  説明書にさっと目を通す。 「なになに『本製品は電気の代わりに感情を消費してふるえるビビら製品です。ご使用の際には感情の蓄え(以下、蓄感という。)が必要となります。蓄感のやり方は……』だめださっぱり分からん」  俺は読むのを諦めた。 「電池で動かないのか?」  電動シェイバーを色んな角度から観察する。電池用の蓋はおろか充電器プラグを挿すための穴すら見当たらない。 「どう使うんだこれ」  スイッチをオンにしても電動シェイバーは反応を示さない。 「何だよくそっ」  電動シェイバーを握りしめ、 「バカにしやがって!」  叩きつけようとした。次の瞬間。 「あれ?」  違和感を感じて踏みとどまった。振り上げた拳を見上げる。俺は目を見開いた。何と、手の中で電動シェイバーがふるえているではないか。 「動いてる? 何で」  口ごもった。俺の脳裏に説明書の一文が蘇る。 ――本製品は電気の代わりに感情を消費してふるえるビビら製品です。 「まさかこいつ、俺を怖がって……?」  試しに電動シェイバーを睨み付け、 「おいポンコツ。もし俺の髭を剃り残してみろ。アパート庭の芝刈り機として使い倒してやるからな」  凄んでみた。直後、電動シェイバーが掌の中でブルブルと本体を揺らし始める。 「おいおいマジか!」  思わず叫んだ。どうやら本当に恐怖心を動力源として動いているらしい。気味が悪くなって電動シェイバーを床に放り投げるも、 「マズイそろそろ夜勤に行かないと。髭を剃りたいが使い捨てカミソリでは時間が間に合わないし……」  拾い直した。 「仕方ない」  俺は洗面所へと急いだ。 ※        
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