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01.体育館裏でタバコを
「あ、授業をサボってこんなところでタバコなんて吸って。先生に見つかったら怒られちゃうよ」
中学校の体育館裏で、陽菜は同じクラスの伊藤拓真の姿を見つける。学生服にリーゼント、そして指にはタバコが一本。
「うるせえな。てめえだって授業サボってんじゃねえかよ」
体育館裏は絶好の隠れ場所だ。授業に出る気もないときの。
「だって授業がつまんないんだもん。伊藤くんだってそうでしょ」
拓真はタバコをくわえ、一生懸命吸う。けど、煙は出ない。火も点いてない。でも、その姿は体育館裏でタバコを吸うヤンキー。
「まあ、そうだけどな。とにかくだ、授業サボってタバコ吸うなんてサイコーじゃねえかよ」
精一杯背伸びしてタバコを吸っているような拓真に、陽菜は思わず吹き出しそうになるけれど、そこはガマン。陽菜は拓真に聞く。
「ねえ、今どきヤンキーなんてダサくない?」
「うっせえ。お前、オレを舐めんじゃねえよ。つうか、てめえどこ中だよ? 言ってみろよ、コラ」
「同じ中学校に決まってんじゃないの」
セーラー服姿の陽菜はあきれながらこたえる。拓真もタバコを手にしたまま、自分の質問が愚かだったことに気づく。
「ああそうか。まあ、そんなことはどうだっていいんだよ。言ってみたかっただけだっつうの。こっちはヤンキーなんだからよお」
「体育館の裏で授業サボってタバコなんか吸ってたら、そのうち見まわりの先生に見つかって怒られるって」
そう告げる陽菜。
「うっせえ、センコーが怖くてヤンキーなんてやってられっかってんだよ。センコーなんか、オレがシメてやるぜ」
拓真はタバコをふかす。そして大きく息を吐き出す。けど、煙は出ない。
「つうか、陽菜こそ授業サボってていいのかよ。センコーに見つかるなんて言ってたけどよお、お前だって体育館裏なんかに来てサボってんじゃんよ。陽菜は成績だって抜群だしさ、クラスでも優等生じゃねえかよ。そんなお前がなんでこんなところに来てんだよ」
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