井の中の蛙、雪国へ行く

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 数分で息が上がる僕とは違い、おじちゃんとキンちゃんは大きなスノーダンプでどんどん雪をすくって、道路の脇にある流雪溝へ流している。カンちゃんはそのために僕と同じくスコップで雪の塊をほぐす役だ。 腕の怠さに溜め息をついて視線を上げると、近所の人もみんな外へ出て黙々と雪かきをしている。ヨボヨボのおじいさんや小柄なおばさんもだ。こんな大雪の中よくやるよ……。雪なんて放って置いても溶けるんじゃないのかな?  その疑問をおじちゃんに問うと、「これはしたり!」と大笑いされた。 「これから先、どんな天気になるのがも分がらねんだぜぇ? そだな呑気な事言ってらんねべよ(いられないだろ)。毎日降る事もあるんだから、片付けられるうちに片付けておがねど。あっという間に家が埋まっちまうし、雪が固まっちまうど、扱うのが大変になるがらな」  ふーん……。「もしも」のために備えておかなくちゃいけないのか。なんだか『アリとキリギリス』のアリみたいだな。 「なんだ陽翔、もう疲れた? ま、慣れねぇだろうから無理すんなよ」  すっかり手が止まっている僕を見てキンちゃんが一笑する。見れば、僕がちょっとボンヤリしていた間、キンちゃんとカンちゃんは文句も言わずにかなりの雪を片付けていた。おじちゃんは言わずもがなだ。
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