井の中の蛙、雪国へ行く

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「いやいや、よぐ来たなぁ。遠路はるばるご苦労さん!」  おじちゃんは体も大きいが声も大きい。趣味が民謡だからかな。 「お久しぶりでーす。というか皆さん、そんな恰好で寒くないんですか!?」  パパが目を丸くして尋ねると、おじちゃんはカカカ! と笑った。 「雪おろししてっと、たちまち暑くなんのよぉ! いやもう、汗びっしょりだは!」  そう言って帽子を取ったおじちゃんの額には汗が光り、今にもユラユラと頭から湯気が立ちそうだ。その隣で笑顔のカンちゃんが僕に手を振る。会うのは夏休み以来だ。つられて振り返しちゃったけど、なんだかちょっと照れくさい。 「寒かったべぇ? 中さ、ばあちゃんいだがら、入ってけろ。おらだ(俺ら)も、もう少ししたら行ぐがら」  おじちゃんに促されて家の中に入ると、暖かい空気と共に甘い醤油とミルキーで独特な脂の匂いが漂っていた。 「芋煮だ!」  僕はおばあちゃんが作ってくれる芋煮が大好き。芋煮は里芋、牛肉、こんにゃく、長ネギにキノコなどを醤油と砂糖で味付けして煮込む山形の郷土料理だ。土地柄、おばあちゃんちの芋煮には山形牛の切り落としが入る。
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