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01. お姉ちゃんからの紹介
「莉菜に紹介したい人がいるの」
そうお姉ちゃんから言われたのは人生で2度目のことで、1度目はお付き合いしている彼氏の紹介だった。大切な人だから莉菜とも仲良くなってほしい、と。実際会ってみたら優しくて人当たりの良い人で、マイペースで自由人なお姉ちゃんを時には優しく見守り、時にはちゃんと怒る人。この人なら大丈夫だって安心したんだけど、まさかあの人とは別れて次の彼氏でも紹介されるのかな? ……なんて不安な気持ちを抱えながら待ち合わせ場所に向かうと、そこにいたのは女の人だった。
待ち合わせた場所はお姉ちゃん行きつけのバーだった。落ち着いた雰囲気でお洒落なカクテルが多く、お酒なんてビールかハイボール、あとは梅酒くらいしか飲まない私には分からない文字の羅列でしかなかったので、注文はお姉ちゃんに任せた。
運ばれてきたのはオレンジ色の液体が入ったグラス。オレンジフィズというらしい。3人で乾杯して一口飲むと、爽やかな甘さが口の中に広がる。初めて飲むお酒を味わっている間に、お姉ちゃんは隣の女性を紹介してくれた。
「こちら、木嶋美妃さん。莉菜と同い年で、お仕事も同じなのよね?」
「はい、システムエンジニアをしています。といっても莉菜さんよりずっと小さい会社なので、莉菜さんと違って設計なんかはほとんどやったこと無いんですけど。いつも香菜さんにはとてもお世話になっているんです」
システムエンジニアの仕事、システム構築はまずシステム要件の確認とシステムの設計があって、それを元に製造とテストがある。確かに私の会社はお客さんから直接仕事を請け負うため、要件確認から行うことが多くて、設計が終わったタイミングでパートナーとなる他の会社から人員調達を行ってシステム構築をしている。木嶋さんの会社はこのパートナーとして他の会社へ出向して仕事を行うことがほとんどなのだろう。若干比べるような言い方が気になったけど、あまり気にしないことにした。
「そうなんですね。初めまして、木嶋さん。澤村莉菜です、よろしくお願いします」
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