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木嶋さんは可愛らしい顔立ちをしていて、アクセサリーやネイルもお洒落で、よく飲み、よく笑う人だった。そういう部分についてはお姉ちゃんと近いものがあって、2人は気が合ったのかもしれない。2時間ほど楽しく飲んで木嶋さんは帰っていった。
「ね、いい子でしょ。莉菜とも気が合うと思うの」
今まで私の友達にはいないタイプだったけど、どちらかというと自分から話すより聞き役にまわったり、相手の話に合わせて会話を広げる私と、自分から積極的に新たな話題を次から次へと振りまいていく木嶋さんは相性は悪くないのかもしれない。だけど……
「なんでお姉ちゃん突然私に木嶋さんを紹介してくれたの? 今まで友達を紹介してくれたことなんか無かったよね」
お姉ちゃんは私の問いかけに答える前に店のマスターに何やら耳打ちをしたかと思うと、目の前に可愛らしいプリンが置かれた。プリンは私の大好物。だけど、お姉ちゃんが私にこういうものを持ってくる時はお祝い事以外だと何やら面倒なお願いをするときしかなかった。今日はお祝いするようなことなんて特に何も無いはずで、嫌な予感がむくむくと湧き出てくる。
「あのね、私そろそろ結婚を真剣に考えようと思ってるの。相手は莉菜にも紹介した人よ。それで、結婚する前に同棲しようって話になって、彼の家に引っ越すことにしたの」
なるほど、それがお祝い事ってこと? だけど、あれ?
「それは良かったね。でも同棲するなら私たちの家に彼と住めばいいじゃない。そういう話なら私すぐにでも出ていくよ」
私は今お姉ちゃんと一緒に住んでいる。お姉ちゃんが就職するタイミングでお母さんがお姉ちゃんに買い与えてくれた家があるんだけど、部屋数にも余裕があったので居候をさせてもらっている。ローンはお母さんが払い続けてくれていたんだけど、5年前に病気で亡くなってからは私とお姉ちゃんの2人で折半しながら返していた。
あの家を出て1人暮らしをするとなると、今よりも家賃は高くなってしまうと思うけどそれは仕方のないことだ。お姉ちゃんのためならそれくらいなんてことない。
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