魔法使い研究会会長

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魔法使い研究会会長

「やぁ、そこの君。魔法に興味はおありかな?みなまで言うな、おありだね。僕はしがない魔法使い研究会の会長さ。まぁ会員は僕しかいないがね。あーはっは!  ところで君はご存知かな。魔法とは案外身近なものなのだよ。  例えば雨傘。それから雨合羽に、雨靴。雨具には雨除けの魔法がかかっているのだよ。  おっと、早とちりするなかれ。とはいっても雨をすべからく除けてくれるわけではないからね。魔法が発動するには相応の条件がついているものなのだよ。  こんな経験はないかい?『今日は雨が降りそうだな』と傘を携えた日に限って雨が降らない……え?ない?否、あるはずだ。あるんだよ。これこそ雨除けの魔法なのだからね!この魔法は『雨が降るかもしれない』という不安な気持ちを糧に発動するのだよ。驚いたかい?驚いたろう!  え、今?嗚呼……降っているね。雨。降っているともさ。止む気配も無いね。  いや、まぁ、今朝は降っていなかったし、確かに僕もでかける前に『雨降りそうだな』と不安に駆られながら傘を携えたものさ。正しく魔法が発動していれば今頃、僕の不安な気持ちを糧に魔法が発動しているはずだったしね。雨宿りついでに図書館に寄っていることも、うむ、否定はできない。雨除けの魔法も、不調な時が無きにしもあらずというか……。もしかしたら僕が昇降口に立った瞬間に雨が止む可能性もまだ残っているはずで……。  ん?  お……、おお!  見たまえ!いつのまにか雨が止んでいるぞ。  なんと素晴らしい、陽まで差してきたぞ。僕の心情を表すかのようだ。  うむ。人の気持ちに呼応する……。これぞ魔法だ。実感したかね?感涙したかね?しただろうとも。しただろうとも。  それでは、雨も止んだので僕は帰らせていただくよ。魔法に興味があれば、ぜひ魔法使い研究会に加入を。さらばだ。あーはっは!」    そうして、彼は図書室から出ていった。  魔法使い図鑑なんてみょうちきりんなものを斜め読みしていたら、随分なご挨拶をされてしまった。  それにしても、おかしな人。ここは図書館だっていうのに、あんなデタラメを声高に披露したりして……。  それに礼儀知らず。せっかく私が気を遣って雨を止めてあげたのに、お礼の一つも言えないのかしら。
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