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 雪深い町の小さな駅舎、待合室では達磨ストーブが炊かれ、木製の椅子には手編みの座布団が置いてあった。座布団の柄は白地に赤だったはずだ。  私はあの頃はまだ大学に通う二十歳の若造で、無鉄砲な旅を趣味としていた。電車に乗り、気に入った駅で下車、宿を探し、滞在する。人からしたら、なんの面白味もないと思われるそれはあの頃の私にはやたらと楽しかった。  
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