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ロマン主義
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19時、閉館時刻が訪れた。
高等部に進んだ私は、家の近所の図書館で宿題を済ませるところまでが放課後の日課となっていた。
学校に残って自主学習をすることもあるのだけど、自宅から学校までが意外と遠いので遅い時間になると下校が厄介なのだ。
朝は常務取締役候補である長兄の出勤ついでに送ってもらうのだけど、成人済みの兄は帰りが深夜になったりするため都合が合わない。
父の秘書なんかに送迎を頼むと不要な気を使うし、タクシーを利用するのはもったいない。
さっさと電車で下校して、家の近所まで来てから図書館で勉強する。閉館後に徒歩12分で帰宅、それから着替えなどの支度を済ませれば夕食のタイミングで食卓につける。
中学時代に試行錯誤した結果、これが最適解であるという考えに至ったのだ。
「ハロ」
「ハロ」
学院指定の牛皮の鞄を背負い席を立つと、馴れ親しんだ顔に出会い、お互いに短く挨拶した。低く片手をあげ合う。
聴覚を塞がず首に銀色のヘッドフォンをかけた彼は読みかけの本を棚に戻しに背を向けたが、その後すぐに図書館の入館口で再会した。
いつもどおり横並びで外に出ると、夜の空気が押し寄せてきた。
「ギンって金持ちなのに、なんでいつも図書館で本読んでるの」
「本読むとき図書館以上に適した場所なんてないだろ」
「あるよ、カフェとか」
「Wi-Fiがあると誘惑が多くて紙の書籍を読めない。だから図書館に来てる。電子書籍のときはカフェとか家で読む」
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