ロマン主義

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 小牧銀は、同じ保育園と小学校に通っていた地元の友人だ。ギンの父親が仕事で大成功してからは同じマンションでも暮らしている。  我々の住居は超人気の動画配信者や芸能人なんかも住んでいるタワーマンションの一室だ。  物件としてはかなり贅沢だが、身綺麗なワンちゃんと人間1人だけで暮らす部屋も多いマンションなので、家族5人で生活している梅田家はしっかり身の丈に合っている。  私の部屋なんて、下の階のインフルエンサーがクローゼットに使ってると思う。 「逆に、そっちは?マネこそ金持ちのくせに図書館で勉強してるのなんでよ」 「そんなの無料だからに決まってるじゃん。コーヒー代がかからないからカフェより安いし、電気代も浮くから家より安い」 「相変わらずですね〜」 「うちはたくさん税金を納めてるんだから、少しでもモトとらなきゃ」  ギンの父親はSNSアプリの開発に成功した起業家である。私もココちゃんもみんなみんな利用している、この10年くらいで普及したSNSアプリ。  ギンの部屋を訪ねたことはないけれど、それなりの水準で生活しているに違いない。しかし彼は学歴や社交に一切の興味がないため、自宅から最も近い都立高校に通っている。    ちなみにギンも父親の才能を受け継いでおり、ゲームアプリの開発を趣味としている。  過去には試作品をプレイさせてもらうこともあったけど、開発者の前で披露するには恥ずかしい腕前であるため最近は遠慮している。ギンの好みのゲームって私の苦手ジャンルなのだ。 「無料でご褒美あげるよ」 「え!なにくれるの!私、無料もご褒美もだいすき!」 「ほい、糖分」
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