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ギンはごつごつしている灰色のリュックを背負ったままファスナーの隙間から手を突っ込み、感触だけですぐ探り当てた小箱を取り出した。
手渡された正方形の小箱はすでに開封済みだったので、躊躇いなく蓋を開ける。
中は4つに区切られていたが、そのうちの1つはもうからっぽで、ころんとした3つの球が鎮座していた。
「チョコレートだ」
「そ、ほんのちょーっとだけアルコール入ってるけど平気?」
「ぜんぜん平気。いま、食べてみてもいい?」
「どうぞ、俺にも1個ちょうだい」
ラム酒の香りが夜の空気に馴染んで、ぺこぺこの空腹を刺激する。
大粒のそれを丸ごと口に含んでから、ギンの口にも放り込んだ。あまい。低く広がるラム酒のほろ苦い風味は、甘ったるいミルクチョコレートとの親和性が抜群だ。甘みのほうが速くて、香りが追いかけてくる。
ふむふむと味わっていると、わざとらしい演技で「酔っちゃった…」とギンがよろける。寄りかかってきた肩を押し返しながら「うそつけ」と防御した。
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