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「いーよ、頑張り屋さんへのご褒美です」
「ありがとう、こんど何かお返しするね」
ラム酒入りのチョコレートなんてコーヒーのお供にぴったりなのだから、私は今日中に食べておくべきだった。
食べずにブレザーのポケットに入れっぱなしだったから、あんなことになったのだ。
◾️
私は、絵画の価値がよくわからない。
学校で習う程度ならわかる。私は下手だ。目で見たものをそのままそっくりに描ける人は写実的ですごく上手。
だけど絵画コンクールとかってなると、全然ちがう。上手下手ってより、価値の高い絵、価値の低い絵っていうのは、その1枚だけでははかりきれない背景によるものだったりする。そうなったらもうお手上げだ。
今日の放課後は図書館ではなく、学院内にある講堂を訪れていた。ただし学年集会があるとかではなく、お目当ては展示物だ。
「ココちゃん、今日ってバレエのレッスンじゃなかった?」
「花菱くんの作品がまとめて展示されるありがたい機会より優先することなんてないもん。すこし見てから急いで帰る」
「やっぱり珍しいことなの?花菱くんなんていくらでも個展を開けるだろうに」
「花菱くんは自分で描いた評価された作品を、芸術と縁遠かったり治安が悪かったりする場所に寄付してるのよ。誰にもお金で買えないし、だからこそ価値がうまれるの」
講堂内には高い天井から吊るされた額縁に入れられた絵画が配置されており、まるで絵画そのものが浮いているみたいだった。
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