ロマン主義

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 代わりに、花菱くんの様子に気付かなかったココちゃんが言った。それを受けた花菱くんは、ようやく驚きの声をあげる。 「僕のことを、よそで話したの?」 「あーごめん、勝手に話しちゃった、」 「あ、いや、謝ってほしいわけじゃなくて、」 「口軽いとかじゃないからね!秘密とか守るし!」 「わかってる!疑ってない!」  激しく否定の首振りをする我々ふたりに、ココちゃんが「ここで長話するのは目立つよ、花菱くんが忙しくないなら外で話せば?」と終止符を打って提案した。 「ココちゃんは?」 「私はバレエに行く」  なるほど。なんだかんだ優秀で真面目な彼女はバレリーナのお辞儀をしてみせた。 「じゃあね。マネと、私のシンデレラさん」 「また明日ねー」 「気をつけて帰ってね、王子さま」  友人を見送ったあと、花菱くんはわたしの手を取った。送り出す挨拶のためにひらひら振っていた手と手だ。まさか捕まえられるとは思ってもみなくて、反射的に振り落としてしまう。 「あ、ごめん、つい、」 「ううん、こちらこそごめん。外で話そう」 どうしよう、気まずいかもしれない。わたしは気まずい空間が何より苦手だというのに。
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