177人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
代わりに、花菱くんの様子に気付かなかったココちゃんが言った。それを受けた花菱くんは、ようやく驚きの声をあげる。
「僕のことを、よそで話したの?」
「あーごめん、勝手に話しちゃった、」
「あ、いや、謝ってほしいわけじゃなくて、」
「口軽いとかじゃないからね!秘密とか守るし!」
「わかってる!疑ってない!」
激しく否定の首振りをする我々ふたりに、ココちゃんが「ここで長話するのは目立つよ、花菱くんが忙しくないなら外で話せば?」と終止符を打って提案した。
「ココちゃんは?」
「私はバレエに行く」
なるほど。なんだかんだ優秀で真面目な彼女はバレリーナのお辞儀をしてみせた。
「じゃあね。マネと、私のシンデレラさん」
「また明日ねー」
「気をつけて帰ってね、王子さま」
友人を見送ったあと、花菱くんはわたしの手を取った。送り出す挨拶のためにひらひら振っていた手と手だ。まさか捕まえられるとは思ってもみなくて、反射的に振り落としてしまう。
「あ、ごめん、つい、」
「ううん、こちらこそごめん。外で話そう」
どうしよう、気まずいかもしれない。わたしは気まずい空間が何より苦手だというのに。
最初のコメントを投稿しよう!