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初めて知った。背が高いなあとは思っていたけれど、隣に並ぶと頭一つ分くらいの差がある。スポーツとかやってるのかな。そういえば部活は? 花月くんなら引く手数多だと思うけど、なんとなく球技が似合いそうだ。ああでも、科学部とかで白衣着て実験してる花月くんも見てみたい。いや、見てみたい度数で言えば家庭科部でお菓子作りしてる花月くんが一位だ。あの大きな手が、慎重に食材をかき混ぜている様子が見たい。ああでもやっぱりグラウンドで楽しそうに運動している姿も。
「ねえ」
「は、はい」
「そのキラキラビーム、やめてくんない」
「キラキラビーム……?」
「うまくいえないけど、その視線のこと。俺の顔になんかついてんの?」
「え、あ、いえ! 今日もすごくかっこよ、」
「は?」
「なんでもないです!」
危なかった。というにはもう手遅れな単語が飛び出してしまった気がするけれど、うまくごまかせたということにしておく。そうしないと体がとても原型を保てそうにない。距離が近すぎてもういろいろと勘弁してくださいというような心地だが、これは自分の勇気の産物だ。なんとか活かして花月くんと友だちになりたい。古池が胸をなでおろしていると、花月が怪訝そうにその様子を見下ろしている。
「ところでさ、いつ敬語やめんの。同級生にそういう話し方されんの、なれないんだけど」
「……え」
「なに。そんなびっくりして」
「ぼ、僕が同じクラスだって、覚えててくれたんです…、くれたの?」
「…いや、覚えてるも何も。後ろの席でしょ、俺の」
感激で世界が止まるかと思った。ていうか止まった。花月が自分のことを知っていて、席の場所まで覚えてくれている。こんな幸せなことがあっていいんだろうか。いつかとんでもないバチが当たるんじゃないかな。
「写真どこで撮る?」
「ひえっ」
「ひえって」
「あ、ごめん」
「なんでちょっと泣きそうなの?」
「だ、えっと、目にゴミがその、信じられなくらい、はいって」
「…大丈夫?」
「げ、げんき。あ、写真だよね。きれいな花が咲いているところ、とか?」
「それより、あんまり人がいない場所が良い。知ってる?」
「もちろん! 学校で一人きりになれるところならだいたい知ってるからまかせて!」
「……誇れることかなあ、それ」
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