花月くんにころされる

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 夢乃の表情は変わらない。花月は古池の目から見て美しさの権化のような人間で、だからたぶん周りの人も同じことを思っていて…それだけが原因ではないと思うけれど、とにかく学校でとても人気がある。隣のクラスだけでなく、違う学年の女の子もたまに古池のクラスへやってきて、廊下から花月の様子を見に来ていたりするくらいだ。まだ四月だから、なんだか皆様子をうかがっているような雰囲気だけれど、これから学校行事が増えたら、花月の人気がもっと目に見えてわかるようになるのだろうか。その勢いであっという間に彼女とかできたり、……。  勝手に想像して落ち込む古池の様子は気にせず、兵藤は自分のスラックスの上に落ちてきた枯れ葉をつまんで放り投げている。 「…このままずっと、花月くんの後頭部を観察する係でもしてようかなぁ…」 「そんな係は必要ない」  なんだか食べる気になれなくて、未開封のパンを膝の上に置いた。きっとこうやって、花月と友だちになりたいと頭を悩ませている人間は、自分だけではないだろう。その人達は一体、どうやって花月と距離を縮めるつもりなんだろう。なんかもう、連合とか組みませんか? 花月くんと友だちになろう会みたいな。…それはなんか、さすがにちょっと。考えながら一人で百面相する古池を、空になった弁当箱の蓋をしめながら、兵藤が無言で見つめている。
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