18人が本棚に入れています
本棚に追加
「わ、やっぱ楓くんだあ。久しぶり」
「……大家?」
「うん、そうだよ」
きっと幾度となく脱色を繰り返したのであろう髪の毛が、点灯し始めた街頭に透かされてきらきらしている。花月の名前を呼びながら近づいてきた彼は、人好かれしそうな笑みをみせると、ひらひらと手を降った。…見たことのない制服だ。花月の知り合いである、ということはわかるのだけれど、それ以外の情報が一切読み取れない。
「卒業式以来かな。楓くんもこっち進学……には少し遠いから、引っ越してきたのかな? とりあえず奇遇ってかんじね」
「お前もいまこのあたり住んでるの?」
「うん、そう。家庭の事情ってやつでさあ…あ、そっちはお友達? はじめまして。俺、楓くんの中学の同級生の大家嵩仁です。こんばんは」
友達百人くらいいそう。それが第一印象だった。こういう、人との壁をまったく作らなさそうというか、感じさせないのってすごく、才能だなあ。花月の中学の同級生、大家はにこにこしながら、そんなことを考える古池を見る。
…よく見ると、大家くんもすごく、きれいな顔をしている。花月くんの中学校には、かっこいい人かきれいな人しかいなかったんだろうか。
「お友達は名前なんていうの?」
「…あ、ふ、古池です」
「下の名前は?」
「はると、です」
「じゃあはるちゃんだね」
「はるちゃん…?」
「てかなんで敬語なの? 俺ら同い年っぽくない? そういう雰囲気感じるしさ」
「雰囲気で年齢がわかるんですか?」
「うん。生年月日と星座と、あと今日食べた朝ごはんとかもわかるよ」
「大家、あんま適当なこと言うなよ。古池はそういう冗談すぐ信じちゃう」
「し、信じないよ! 冗談だってちゃんとわかってるよ!」
「あは。俺はるちゃんけっこう好き。仲良くなれそう」
いまのどこでそう思ったんだろう。古池が首を傾げていると、大家がすうっと目を細めて花月を見る。
「高校は知らねえけど、中学の時とかは周りにいなかったタイプだねえ楓くん」
「そう?」
「そうだよ。中学の時の楓くんって、クラスの全員と平等に仲良しって感じだったからさ」
「…覚えてない」
あれ、なんか。
「休みの日に誰かと二人で遊ぶより、常に大人数で行動してるイメージ。だからなんか意外だなあ」
「大家もそんな感じだっただろ」
「あは、そうだっけ?」
花月くんがすこし、困っているような。
最初のコメントを投稿しよう!