花月くんにほめられる

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「わ、やっぱ楓くんだあ。久しぶり」 「……大家?」 「うん、そうだよ」  きっと幾度となく脱色を繰り返したのであろう髪の毛が、点灯し始めた街頭に透かされてきらきらしている。花月の名前を呼びながら近づいてきた彼は、人好かれしそうな笑みをみせると、ひらひらと手を降った。…見たことのない制服だ。花月の知り合いである、ということはわかるのだけれど、それ以外の情報が一切読み取れない。 「卒業式以来かな。楓くんもこっち進学……には少し遠いから、引っ越してきたのかな? とりあえず奇遇ってかんじね」 「お前もいまこのあたり住んでるの?」 「うん、そう。家庭の事情ってやつでさあ…あ、そっちはお友達? はじめまして。俺、楓くんの中学の同級生の大家嵩仁です。こんばんは」  友達百人くらいいそう。それが第一印象だった。こういう、人との壁をまったく作らなさそうというか、感じさせないのってすごく、才能だなあ。花月の中学の同級生、大家はにこにこしながら、そんなことを考える古池を見る。  …よく見ると、大家くんもすごく、きれいな顔をしている。花月くんの中学校には、かっこいい人かきれいな人しかいなかったんだろうか。 「お友達は名前なんていうの?」 「…あ、ふ、古池です」 「下の名前は?」 「はると、です」 「じゃあはるちゃんだね」 「はるちゃん…?」 「てかなんで敬語なの? 俺ら同い年っぽくない? そういう雰囲気感じるしさ」 「雰囲気で年齢がわかるんですか?」 「うん。生年月日と星座と、あと今日食べた朝ごはんとかもわかるよ」 「大家、あんま適当なこと言うなよ。古池はそういう冗談すぐ信じちゃう」 「し、信じないよ! 冗談だってちゃんとわかってるよ!」 「あは。俺はるちゃんけっこう好き。仲良くなれそう」  いまのどこでそう思ったんだろう。古池が首を傾げていると、大家がすうっと目を細めて花月を見る。 「高校は知らねえけど、中学の時とかは周りにいなかったタイプだねえ楓くん」 「そう?」 「そうだよ。中学の時の楓くんって、クラスの全員と平等に仲良しって感じだったからさ」 「…覚えてない」  あれ、なんか。 「休みの日に誰かと二人で遊ぶより、常に大人数で行動してるイメージ。だからなんか意外だなあ」 「大家もそんな感じだっただろ」 「あは、そうだっけ?」  花月くんがすこし、困っているような。
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