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「お前はどうやってここまで侵入したんだ。もう真夜中を過ぎているぞ」
「先ほどからお主、妾のことを『お前』呼びとか失礼にも程があるぞ」
「不法侵入しているお前の方が失礼だろ。名前なんて教えて貰ってないんだから。名前すら分からない女に俺はファーストキスを奪われたし」
「ふむ。では、改めてここで自己紹介とでもいくかのぅ」
だから、我が物顔でベッドに潜り込むな。そんな俺の言葉を聞く耳なんて持たず、少女は名刺を差し出してきた。
そこには、こう書かれてあった。
磯海緋女。特級ハンター。
暗魔ハンターの界隈では誰もが知っている名前だった。
特級ハンターというのは、『暗祓屋』における一番上のランクであり、現在3人しか確認されていない最高戦力だ。
下から3番目の3級である俺にとっては、雲の上の存在。それが、こんなちみっこい奴だったことに、一番の衝撃を覚える。
ああ、そうか。これ、夢だ。俺は現実逃避するように、また眠ろうとした。するとチャキッと額に冷たいものが突きつけられ、強制的に目覚めさせられる。
「さて妾の自己紹介も済んだことだし、夜の語らいでもしようか。ここは深夜の病院。一カ月前とは違って、逃げ場はないぞ?」
「何度も言うが、その誘いは断るぞ。助けた恩を盾にしたって、それはお前の不始末として振りかざしてやるからな」
「そうか。なら、やむを得ない。罪悪感で押しつぶれるが、致し方ないのぅ。ほれ、見てみぃ」
片手にあるのは1つのスマホ。そこには、俺と緋女が互いの衣服をはだけさせた状態で寝ている写真がうつし出されていた。
「き、汚ねぇぞ。お前」
「言ったであろう? 『妾はどんな手を使ってでもお主が欲しい』と。それとも、この写真だけでなく動画もアップロードするかぇ? 具体的には、お主が妾によって真の階段を――」
「お前、いつか地獄を見るぞ」
「地獄など、妾たち特級ハンター全員で最上位暗魔と戦った時によう見たわ。さぁ、選ぶがよい。妾の弾薬箱になるか。それとも、社会的抹殺になるか。二つに一つぞえ?」
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