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朝起きたら、雪が降っていました。
「やったぁ! 雪だ!」
僕はそう叫ぶと、愛犬のコタロウを連れて庭に飛び出しました。
庭はもうすっかり雪に覆われていて、歩くたびにサクサクと音がします。
僕は雪が大好きです。毎年、冬になるとワクワクします。
友達と一緒に雪合戦をするのも、雪だるまやかまくらを作るのも楽しいです。
コタロウも、雪が大好きです。雪を見ると、興奮して走り回ります。
僕はお姉ちゃんに手伝ってもらいながら、雪だるまを作ってみました。いまいちうまく出来なかったけど、僕は満足でした。
その日の夜は、みんなで鍋料理を食べました。温かくて、とても美味しかったです。食べ終わった後は、テレビを観て過ごしました。
お母さんとお姉ちゃんはよくチャンネル争いをしていますが、僕は観たい番組があっても譲ります。みんなで一緒にテレビを観ること自体が楽しいからです。
僕は、こんな毎日がずっと続けばいいのにと思いました。僕とお父さんとお母さんとお姉ちゃんとコタロウ。みんなといつまでも一緒にいたいです。
明日は、どんな楽しいことがあるのかな? そんなことを考えながら、僕は眠りにつきました。
次の日。
目が覚めたら、家族がいなくなっていました。
その代わり、知らないおじさんとおばさんと男の子が家にいました。
嫌な予感がした僕は、慌てて庭に出ました。思った通り、コタロウの犬小屋がありません。なんだか、おかしいです。確かに、昨日まではあったはずなのに。
庭を見渡してみましたが、コタロウの姿はどこにも見当たりません。
僕はおじさんとおばさんに「みんなはどこにいるの?」と尋ねてみました。
でも、二人は行き先を教えてくれませんでした。もしかしたら、僕は捨てられてしまったのかもしれません。
みんな、僕のことを嫌いになってしまったのでしょう。だから、出て行ってしまったのです。
僕は、わんわん泣きました。今まで、優しくしてくれていた家族はもういません。どこに行ってしまったのかもわかりません。
仕方がないので、僕はおじさんとおばさんと男の子と一緒に暮らすことにしました。
ある朝、窓の外を見ると雪が積もっていました。
僕は、公園に行って雪だるまを作ろうと考えました。
そこで、男の子に「一緒に遊ぼう」と声をかけたのですが、断られてしまいました。
男の子には、友達がたくさんいるらしいです。だから、忙しいのかもしれません。
外に出ると、あっという間に体が冷えていきました。でも、僕の心はぽかぽか温まっていきました。雪を見ると、楽しい気分になるからです。
公園で雪だるまを作っていると、突然声をかけられました。振り向くと、そこにいたのは知らないお兄さんでした。
お兄さんは、僕に向かって「家に帰りなさい」と言いました。
僕は「まだ雪だるまを作っている途中だから嫌だ」と断ったのですが、お兄さんはなかなか諦めてくれません。
結局、僕はお兄さんに連れられて家に帰ることになってしまいました。
明日こそは、絶対に雪だるまを完成させたいです。
***
「おじいちゃん、見つかったって?」
「うん。今、警察から連絡あった」
母の言葉を聞くなり、僕はほっと胸をなで下ろした。
僕の祖父は認知症だ。だから、孫である僕はおろか実の息子である父のことすら誰なのか覚えていない。
症状は徐々に進行しているらしく、ついに勝手に外に出て徘徊するようになってしまったのだ。
「そっか、良かった……」
実のところ、僕は祖父に対してそっけない態度をとってしまったこともあって罪悪感に苛まれていた。
さっき、不思議そうにスマホを覗き込みながら話しかけてきたものだから、「あまりじろじろ見ないでよ。あと、今忙しいから話しかけないで」と言ってしまったのだ。
今度から、ちゃんと話を聞いてあげないとな。ごめんね、おじいちゃん……。
「そう言えば、おじいちゃんって雪が降るといつも嬉しそうにしているよね」
「言われてみれば、確かにそうね。なんでかしらね?」
「もしかしたら、子供の頃のことを思い出しているのかもしれないね」
母とそんな会話をしながら、僕は窓の外に目を向けた。雪はしんしんと降り続けている。
ふと、僕は幼い頃に祖父と一緒に雪だるまを作ったことを思い出したのだった。
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