それ

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 ボンッ、と大きなが鳴り、突然の熱風に僕は顔を腕で隠した。腕から顔をのぞかせると、炎上するパトカーに瞳孔が開く。一体、何が起きたんだ。  原田さんが乗っていたパトカーが、。轟轟と燃えている。 「え……?」  理解が出来なかった。スイッチはきちんと刑事に渡したし、刑事がスイッチを押すとも思えない。  僕は爆弾の全貌を見ただろうか。あの時は一部しか見えていなかったではないか。もしあれが、時限式だったら? 考えてみたら、原田さんがスイッチを押して死ぬとは思えない。彼にはそんな行動はできない。あのスイッチはもしもの時の為だったのだ。 「うそ、だろ……」  ウーウーと遠くからサイレンが聞こえる。僕はその場に崩れ落ちると、燃え続けるパトカーを眺めた。  後日、原田さんの家から遺書が見つかったそうだ。「許してください」と綺麗な字で書かれた手紙が居間の机に置いてあったらしい。彼が一体何に許しを得ようとしていたのかは分からない。人は見た目にはよらない。あんな優しそうな見た目をして、実はひどいことを過去にしていたのかもしれない。僕には知る由もなかった。  ただ一つ言えることは、僕はもう人を信用することはできないということだ。 (了)
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