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3 強烈で不可思議な共感
それから女の子は、青いブラウスを着た人形を手にした。
「お姉さんも舐めてみる?」人形片手に、女の子は凛を覗いた。戸惑う凛を見て、「ちゃんと洗ってある」と女の子はいった。衛生面を気にしていると思ったのだろう。
「そういうことじゃなくて、ね」
凛の返答を気にもせず、女の子は人形の頭を割った。その人形は青いバラのモチーフを散りばめたデザインのブラウスを着て、黒のパンツ、そして黒いメリージェーンシューズを履いていた。人形はどことなく、凛の目の前にいる女の子にも似ていた。
人形の右目を取り出すと、女の子はそれを差し出した。
「早く」と、急かす。
しょうがない。凛は目玉を舐めるふりをした。
「ちゃんと舐めて」
観念した。ぺろ、っと舌先で舐めてみる。冷たいプラスチック製の目玉が凛の舌に触れた。だが驚いたのはその直後。舌を口の中に戻そうとした瞬間、脳をいきなり誰かに引っ張られたような衝撃があったのだ。脳が動くのを、凛は生涯で初めて感じた。それからすぐ、決して自分のものではない感情が胸の奥から一気に溢れてきたので狼狽してしまった。
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