3 強烈で不可思議な共感

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 氾濫する川のように流れ出る感情。それは、寂しさ。強烈な寂しさだった。身体的な苦痛を伴うほどの。  胸がひどく痛んだ。寂しさで息をするのもやっと、という状態になる。救いを求めるように女の子を見ると、女の子も、いまの凛と同じ感情を抱いているのがわかった。この子、寂しいんだ。そう判断する根拠はないが、なんとなく、いや、絶対にこの子は寂しがっている、とわかる。不可思議で妙な共感。  人形の目玉を媒介として女の子の感情が凛に届いたのだろうか。だがはたしてそんなことがあり得るのか。さっき女の子は、目玉を舐めれば“お人形の気持ちがわかる”、といっていた。だとすれば、凛を苦しめるこの感情は女の子のものじゃなく、人形のものということになる。しかしそもそも人形に感情などあるのか。それに、目玉を舐めて誰かの感情が伝わるということ自体、俄かには信じがたい。ということは、これは元来自分の中にあった感覚に過ぎないんだろうか。目玉を舐めることによってそれが眠りから覚めた、というだけのことなのか。混乱する凛。 「気持ち、わかった?」女の子が訊いた。「この子、エリーっていうの」 「これは……エリーの気持ち?」少女のように首を傾げた。 「そう。わかったでしょ?」 「エリーはとっても寂しいみたい」消え入りそうな声で答える。本当に、これは人形(エリー)の感情なんだろうか。少しして凛は付け加えた。「あなたも、寂しいのね」  女の子はびっくりしたような顔を浮かべ、後ずさった。「わたしも?」 「うん、あなたも寂しいはず」  女の子がいきなり泣き出した。声を出さず表情も変えず、女の子の目からただひたすら涙が流れた。
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