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「うん、そう。このおめめはね――」女の子は、凛のほうに目玉を向けた。まるで、皿の上からこっちを見ているみたいだ。「ケイティのおめめなの」
「そうなの」
「ケイティはね、最近まわりのお人形にいじわるしてるから、なんでそんなことするのか知りたくて、それでケイティのおめめを舐めてみたの」
「気持ち、わかった?」ケイティがどんないじわるをしているのか質問する気にはなれなかった。
「さみしいみたい」女の子はいった。
人形にしては大きな目玉。そもそも、人形から目玉を取り出せるものなのかな。
「ケイティに会いたい?」女の子が訊いた。
これ以上女の子の相手をしていたくはなかった。だが唯一の知り合いである上司は店主と話し込んでいるし、女の子を拒否し、このまま放っておくにも気が引けた。「うん、会いたいな」と凛はそっけなく答えた。
「じゃあこっち」といきなり立ち上がった女の子は凛の手を取ると、歩くよう促した。渋々ついていく。店主――女の子の母親――の前を通る際、「うちに行ってる」と女の子は声をかけた。店主は女の子を軽く見て頷くと、また会話に戻った。
お店を出るの?という凛の質問に答えは返ってこない。
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