2 おめめ

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 人形はすべて同じ顔をしていた。アメリカの着せ替え人形だ。人形の顔を見てすぐにわかった。凛も知っているおもちゃだ。若い女性に人気がある、とネットかなにかで見た気がする。子供だけでなく、熱心な大人のコレクターもいる人形だった。その人形は頭が大きくディフォルメされ、印象からすると、ものすごくおしゃれをした子供、みたいな感じだ。どれも同じ顔、同じ表情を浮かべた人形だが、同じ格好をした人形は二つとない。どれも違った装いをしている。おとぎ話のお姫様のような人形もいればハイキングの格好をした人形も、ロカビリー姿の人形もいる。髪型もそれぞれ違って、装いに合ったものになっている。  女の子はそれらの中からケイティを選ぶと、慣れた手つきで人形の頭を半分にかぱっと割った。そして手にしていた目玉――さっきまで舐めていたものだ――を眼窩に嵌めると、割れた頭を元通りにして棚に戻した。 「ケイティはなんていってた?」凛は訊いてみた。「おめめを返してくれてありがとう、とか?」 「なにも」女の子は表情一つ動かさずに答えた。
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