19・恋の行方

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「でも私....恋ヶ窪くんが思ってるような子じゃないよ?笑っていられない時もあるしわがままもたくさん言っちゃうかもしれないしヤキモチもやいちゃうし嫌だって思うことたくさんあると思う.....」   ーー次の瞬間、恋ヶ窪はニアをギュッと抱きしめた。 「いいよ。受け止めるから。」 ニアの頬にぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。 夢なんじゃないかと自分の頬をぐにっと掴む。だがちゃんとじんじんする。 一方通行だと思っていた恋が初めて繋がったのだと改めて実感すると余計涙が止まらない。 「終わらせなければいいだけだよな。答えは単純だった。」 「......恋ヶ窪くん」 「恋愛が人間の1番弱い所でするものなら踏み出せなかったのは俺の弱さ。俺もただの普通の人間だ。」 腰に手を回したまま身体を少し離した恋ヶ窪がニアの潤んだ瞳を見つめる。そして穏やかに微笑む。 「こんな“普通”の俺でいいなら一緒に恋とやらをしてほしい。」 「っ?!」 その刹那、ニアは両手を恋ヶ窪の首に回してピョンと抱きついた。 「恋ヶ窪くんがいいっ!大好き!!」 恋ヶ窪もギュッと腕に力を入れて抱き止める。 「俺も好きだよ。ニア。」 おでこをコツンと当て2人して破顔した。 そして赤く染まった空の下で唇を重ねたーーー  校舎から門までの道を手を繋いで歩いていると、案の定他の生徒達がその場で立ち止まりコソコソと話し出した。 「え。確か恋ヶ窪ってニアちゃんを溺愛するあまり振られたんだよね?」 「うんうん。昼休みの“俺は他の女に興味ない”宣言カッコよかったらしいじゃん!」 「わぁ〜仲直りしたんだ♡」 「ちゃんと恋できて良かったね恋ヶ窪。」 もはや噂は真実だ。 恋ヶ窪は照れくさそうに首の後ろをかく。 「にーあ!」 「え?」 門の外に出たところで涼菜が待っていた。寄り添う2人を見てニカッと笑う。 「いや〜やっとかぁ!!」 「ふふ!おかげさまで!」 「なんだか手のひらで転がされた気分ですけど。」 「見ててじれったかったのよ。2人して完全に拗らせてたから意味不明にすれ違ってるし。」 恋ヶ窪とニアが顔を見合わせる。 「それは確かに。」 「うん。」 気持ちが通じ合ったからか、今までとは少し空気感が変わったことに気付いた涼菜は、自分のことのように誇らしげな顔を浮かべる。 「恋ヶ窪これからはニアを頼んだ!」 「.....はい。」 少し気恥ずかしそうに答えると3人は並んで歩き出した。 「ついでにゲーム用PC買いに行きたいからこれから2人とも付き合って。」 「いきなりですね。まぁ別にいいんですけど今日がいいんですか?」 「即行動!」 「はぁ...俺はいいですよ。にゃあさんは?」 するとニアはハッと大切なことを思い出して恋ヶ窪に耳打ちをした。 「実はね、最初に何気なく涼菜が“恋ヶ窪くんはどう?”って言ってくれたのがキッカケだったんだよ。あの言葉がなければたぶんこうはなってなかったと思う。シュウさんが言ってた“タイミングの神様”って涼菜だったのかな?」 「へぇ。」 恋ヶ窪はくるっと涼菜の方に向き直った。 「配線も手伝います。」 「え?!それはいくらなんでも悪いよ!」 「いや。借りは消化していきたいんで。」 「何のことだよ。」 じと〜っと目を細めた涼菜は、至って真面目かつ淡々とした態度の恋ヶ窪についと吹き出して口の端をあげる。 「でもまさかこうなるとはな〜恋に興味ゼロの恋ヶ窪を変えたのがまさか恋愛音痴のニアだったとはねぇ〜。」 「私って強運らしいっ!」 「それは確かにね。」 駅の前まで来たところで手前に行列ができている場所を見つけた。 「あ!あんなとこに新しいカフェできてる!?まさかライバル店?!」 「本当だ!雰囲気もオシャレだしなんか美味しそう。」 「ごめんやっぱあそこ偵察したいからパソコンは今度で!ばいばい!!」 「え?涼菜〜?!」 あっという間に行列の一部となった涼菜は遠目でもワクワクしているのがわかる。 ニアは行き場の無くした手をそっと下げた。 「涼菜は美味しい食べ物に目がないんだよね昔から。」 「そうなんだ。確かにこの前買って来てくれたパンも美味しかったな。」 「涼菜は食べる専門だからもしかしたら作るの上手なシュウさんと意気投合するかもね。」 恋ヶ窪が思い切り嫌な顔を浮かべる。 「想像したくない。てか待ってもいいけどどうする?」 「恋ヶ窪くん勉強あるでしょ?」 「最近勉強手につかなかったからね。」 「なんで?」 「誰かさんのことが気になって。」 途端にニアの顔がぼんと赤くなる。 「私だって......恋ヶ窪くんがいないと寝れないんだから...」 拗ねて口を結んだニアの頭にポンと恋ヶ窪が手を乗せた。 「そういえばひとつ良い?」 「なに?」 「最初に俺に言ったセリフ覚えてる?」 「え?最初?」 「教室でいきなり言ってきたセリフ。あれやり直したいんだけど。」 少しの間視線を上に向けて考え込んだニアだったが、パッと口を開けてコクリと笑顔で頷いた。 「恋ヶ窪くんっ!」 「はい。」 「SNS全部消して私と運命の恋してくれませんか?!」 すると恋ヶ窪は見たことのないような満面な笑みを浮かべる。 「全SNSどころかスマホも持ってない俺だけどいい?」 「もちろんっ!!」 ニアの明るく幸せな声が、 恋色に染まった空に響いたのだったーーー。 ⌘ fin. ⌘
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