赤い手袋

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昨年の事。 珍しく夜通し雪が降った日の翌朝、私達は頑張って自転車を漕いで登校した。 ところが教室に入る前に先生が声をかけてきた。 「あー、連絡間に合わなかったか。今日は休校だ。」 は? なぜ? 「シャトルが雪で運行できないそうでな。」 確かにちょっと積もってるけど。でも自転車で来られるくらいだよ?これで止まっちゃうの? まあ、仕方ない。新しいだけで実際のシステムは脆弱なんだろう。ターミナル駅から来る生徒はそこで終日運行停止を知り、ついでにうちの高校は休校だと知って帰ったり遊びに行ったりしているのだろう。 あれ、うちの近くから来てる英語の先生がこちらを見ている。 「お前ら、どうやって来た?シャトル止まってるだろ」 「え、あそこからなら自転車ですよ?」 マサトが目をぱちくりしながら答えた。 「お前みたいな真面目がいると休校にならなくなるから早く帰れ。」 真面目っていやこのくらいなら普通来るでしょ? 私は思わず聞いた。 「えーっ?先生こそどうやって来たんですか?」 「俺は仕事だからタクシー乗ってでも来たんだけどな。」 あー、たしかこの先生は電車乗り継いで通学…じゃない通勤してたっけ。交通費でるならまあそうなるか。 なんだか腑に落ちないが、休校と決まったならこれ以上積もらないうちに帰った方が良さそうなのは確かだ。さっさと帰るか。 なんて出来事があったのだ。 「シャトル、見た目はいいし楽しいけどさ、雪に弱いのだけはダメだな。」 「もう、雪で交通機関止まっちゃうから休校なんてこの辺でうちの学校くらいなもんだよね。まあ、あんまり雪降らないから対策してないのかもしれないけどさ。」 ノロノロと自転車置き場から自転車を出す。 「さわ、ちゃんと鍵持ってるか?」 「えっ?」 「雪だからなー、気をつけろよ!」 マサトはヘラヘラ笑うとあちらで待っていた友達のところへ行ってしまった。 雪。 鍵。 マサトめ。覚えていたのか。
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