赤い手袋

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かまくら(っぽいもの)4人は駅まで話しながら歩き、混雑する電車に乗り込んでなおヒソヒソ話していた。 さくらちゃんは製菓部でオリジナルレシピを作った話、卒業したら都内の女子大に進学が決まった話をしてくれた。 あきちゃんはロボコンのチームに入った話や、無音室でデータを取ったりするクラスの話をした。 私たちは、全員がオリジナルの時間割で動いていてなおかつ校舎が広いので、休み時間が15分あるために90分授業が発生することなどを話した。 ターミナル駅につき、さわとマサトは降りる。 「さわちゃん、じゃあ!」 「またね!」 2人は少し小走りにシャトルの改札へ向かう。定期券ではないので切符を買う時間が必要だ。 「あ。」 運休である。まさかの運休である。 雪は止んでいるが、凍結と電気系統の異常のため終日運休である。 ということは…… 「おい、お前ら、今日は休校だって。」 振り返ると、昨年も声をかけられた英語の教師がいた。このタイミングだと先ほど同じ電車に乗っていたようだ。 「先生はタクシーで行くんですよね…」  「そうだー。仕事だからな。」 「お、お疲れ様です…」 「まあ、気をつけてな。」 教師はタクシー乗り場へと去っていった。 クシュン。 マサトが小さくくしゃみをした。 「さむ。」 「ここ、風が抜けるよね」 「…さわ、いいもん持ってるじゃん。それ貸して。」 「え。」 マサトはさわのマフラーを外すと自分の首に巻いてしまった。 「ちょ、ちょっと!」 「おれも赤似合うんだよね。」 「貸すって言ってないし」 「え、だめなのか?」 「もうそれあげる。そのまま使ってて。」 真顔で困るマサトに、なんだかおかしくなってそのままあげることにした。これ、練習で編んだものだし。 「そういえば、マサト、かまくらのとき手袋ずっと毎日探してくれてたんだってね。」 「ん?そうだったっけ?」 「ありがとね。」 マサトはちょっと遠い目をした。 「赤い手袋なんてわかりやすいもの、すぐ見つかると思っただけだし。」 一呼吸おいてマサトは、さわの手袋を見た。 「ほら、今も赤いのだし。」  マサトはいきなり手を繋いでずんずん歩き始めた 。 「!」 「ハンバーガーでも食べに行こ。」 「え、えっと」 「おしゃれなパンケーキ屋は無理。」 「そうじゃなくて」 「ほら行くぞ」 「待って待って待って待ちなさいってば!」 マサトはそのままさわを引っ張っていくのだった。 【おわり】
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