72人が本棚に入れています
本棚に追加
そう…智則さんは普通に粘着していきているんです。
普通に勤め先の店の前を通過していったり、遅番の帰りにあとをつけてきたり…。
今の住まいは出入口にカメラがあるんですが、そこにも不審な男性が映っていることがあったそうです。
それと、別居後に全部変えたフリーメールアドレスにも、智則さんから毎日メールがくるんです。
「君のことを毎日思っています。帰ってきてください」
「ずっと君を愛しています。悪いところは全部直すから…戻ってきて欲しい」
こんなメッセージばかり送ってくるので、困ってしまいます。
保管だけして、一切返信はしていないけど…。
1年間で6回メールアドレスを変えても、必ず見つけてメッセージを送ってくるから本当に怖い。
ブロックしてもなぜか送ってくるから本当に恐ろしい…。
こんなことを龍彦に話すと…
「仕事、変えた方がよくない?」
「え?やっと慣れてきたのに…」
「水沼さんが、この辺をウロウロしているのなら、住まいも変えた方がいいのかもしれないよ?」
「そんな…」
危ないかも…ってことはなんとなく分かってはいた。
でも、いざ行動に移した方が良いと言われると、また引っ越して仕事探してといったことが大変になっちゃう。
「たっちゃん(龍彦)と離れちゃうのが、一番嫌だな…」
「そういってくれるのは嬉しいけど…沙絵ちゃんの身の安全の方が重要だよ。最悪はシェルターにかくまってもらうってのもあるから」
「うん…」
シェルターは入ってしまうと、周りとの接触を一切禁止されてしまうから、本当に最終手段としてといった感じで考えていました。
やっと友達とも普通に会えるようになって、最近流行り始めたリアンティ(架空のSNS)をはじめて充実した日々を送りだしたのに、それをまたリセットなんてしたくなったんですけどね。
「沙絵ちゃん、喫茶店でコーヒーでも飲まない?」
美味しいイタリアンを堪能した後に、もうちょっと私たちはお喋りしたいなって思って、私もOKしました。
龍彦と付き合うようになってから、いつもいく喫茶店があるのですが、そこに向かっている途中、龍彦が足を止めたんです。
「沙絵ちゃん、待って」
「……リアンティやめるわ…」
さすがに怖すぎて、友人に事情を説明し、連絡を取るのはLINEに戻し、数日後にリアンティをやめました。
リアンティをやめてホッとしたのもつかの間。
智則さんの本当の恐ろしさを知ることになるとは、この時はまだ思ってもいませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!