26人が本棚に入れています
本棚に追加
「江口?おい、江口…」
「…え?」
「お前、大丈夫かよ…」
「え?あぁ、すみません…何か言いました?」
加藤部長は、手入れのされていないゲジ眉を下げて「だから〜お前さ、児玉と付き合ってたんだな?って」と呆れた様に言った。
「え?」
「児玉、心配性なのな!」
「ちょ、ちょっと待ってください…え?なんて?」
俺は、部長のあまりに突拍子もない質問に混乱した。何故そんな勘違いをされているのか理解出来ず「俺が?児玉と付き合っているって?」と、質問を返す。
「そんな、とぼけるなって…今回の救助要請だって児玉がしたんだぞ?浮気防止アプリ入れられてるんだろ?束縛はキツイよなー…何、お前、あのデカい尻に敷かれてんの?」
加藤部長は無邪気な笑顔を見せた。
「浮気…防止アプリ?」
頭の中が真っ白になった。
俺は、床頭台に置かれたスマホに目をやった。画面バキバキな上に、昨夜のうちにバッテリーは切れていた。確認することは出来ない。
「GPSのアレだろ?迎えに行かないとって言ったら、ここの病院だって児玉が教えてくれたんだ…」
加藤部長は、喋っている途中でピクッと反応したかと思うと、お尻のポケットからスマホを取りだした。
ブブブ…ブブブ…
「お、噂をすればだ…」と、加藤部長はニヤリと笑い「もしもし?」と電話に出た。
俺は今までの児玉との関わりを思い出す。
───嘘だろ!?
悪寒が走り、全身が粟だった。
最初のコメントを投稿しよう!