ホワイトアウト

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 二時間ほど車を走らせると、辺りに民家は少なくなっていき、徐々に山深くなっていく。  やがて大粒の雪が舞い始めた。まだ二時だというのに、空は灰色の雲に覆われているせいで薄暗い。  俺は車のヘッドライトを点灯させた。  田舎の山道だ、ほとんど車は走っていない。それでも、五分から十分に一度くらいは対向車とすれ違う。  圧雪の路面で、滑りやすい状況だということが見て取れた。  大粒の雪のせいで視界が悪くなってきた。それに曲がりくねった道ばかりで、ハンドルを切る度にスリップするんじゃないかと肝を冷やす。  目の奥と肩に力が入り、ハンドルを握る手が汗ばんだ。  ゴゴゴゴ…  地響きのような音が聞こえたかと思うと、対向車からトラックがスピードに乗ってカーブを下って来た。    えぇ!?  雪のせいで視界が悪く、そのトラックに気づくのが遅れたことで、俺は反射的に強めにブレーキを踏んでしまった。  道幅は狭いながらも十分にあった。何もせず、ただ黙ってやり過ごせばいいだけだった。それなのに、俺は凍結路面のタブーを犯してしまったのだ。  "カーブの途中での強いブレーキ"  ブフォーーーン…  トラックのクラクションの音が脳内に響いた。  ヤバイ!  そう思った俺は、咄嗟にスリップした方向へとハンドルをきった。  クラクションを鳴らしたトラックはそのままカーブを下り、俺は何故かそのトラックのテイルランプを見つめている。  俺の車は百八十度スピンしながら対向車線へとスリップしたのだ。スレスレのところでトラックとの接触は免れたのだが、車の勢いは止まらない。テイルランプの赤は、また白の世界に消えていった。  すべてがスロー再生のように感じられた。  ガコン!  強い衝撃の後、フワッと臓物が浮く感覚。  ───あっ!  ガンッ…ガコンッ…ガッシシャン!  
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