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温かい。身体中を熱が巡っている。 心地よい安心感のなかで、ウイリアムは目を覚ました。 暖炉で炎が燃えていた。 ウイリアムは暖炉の前の絨毯に横たわっていた。毛布がかけられ、頭や背中の下にはクッションが敷かれている。柔らかさに埋もれて居心地が良かった。 暖炉から届く温もりが、まるで極上の甘味のように染みこんでくる。 「具合はどうだ?」 声のほうを見ると青年がいた。 暖炉のそばで椅子に座っている。 「連れの彼女は向こうで眠っているよ。心配はいらない」 指差されたソファでリリーは寝かされていた。毛布に包まり、クッションを抱きしめてぐうぐうと眠っている。本当に心配する必要がみあたらない様子だった。 「俺はウイリアム。王都の聖教会の騎士だ。爆睡しているのはシスター、リリー。助けてくれてありがとう」 「セオだ。ただの旅人でただの通りすがり」 ウイリアムは改めて周囲を見回した。部屋は広く、屋敷の一室のようだった。落ち着いた色合いで統一されている。 扉は閉め切られていた。すべての窓は生成色(きなりいろ)の分厚いカーテンが引かれている。 高い天井には(きら)びやかなシャンデリアが下がり、光量を抑えた穏やかな光が灯っている。 「ここは?」 「秘密の部屋だよ」 ウイリアムはシャンデリアに目を細めながら、記憶を思い返していた。 「セオ。きみと出会って、ここで起きるまでの記憶が曖昧なんだが……。どうやって?」 「それはこの不思議なコートのせいだね」
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