蓮の思考

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蓮が、静かに息を吐いた。 瞳からは悲しみが溢れている。 「みんな、『陽向ちゃんが可哀相で助けたい。けど、彼女は強いから助け方が分からない』って思ってるの?」 4人が、小さく頷く。 「真奈美ちゃんも、そう思ってるの?」 「私は1人じゃ助けられなかったけど、みんなとなら助けられるんじゃないかって」 苦さや辛さが入り混じった蓮の顔は、泣いていないのに泣いているように見えた。 「そっか。俺からしたら『助けたい』なんてエゴだと思うよ。誰にも彼女を助けることなんてできない。それに、可哀相ってなんで思うの?」 「蓮、何言ってんだよ。可哀相って思わないお前はおかしいぞ」 「そうかもな。でも、どうして陽向ちゃんの過去だけ特別視するんだ。俺たちが今友達なのは、過去の陽向ちゃんじゃないだろう?」 蓮の言ってることが分からないからか、みんな言葉を発しようとしていない。 「俺の初体験は中1の冬だった。そこからだから、やった人数100人は余裕で超えてる。初デートは公園だったな。嬉しくて晃に自慢したら、あいつの方が早くて悔しかったよ」 「副会長、何の話ですか?」 質問をしたのは望だが、みんな同じ意見なのだろう。 蓮を不思議そうに見ている。 「俺の過去。俺の考え方を言うと……俺は友達を作る時に、そいつの過去を聞いてから友達になるかどうかなんて決めないよ。一緒にいて楽しい奴と友達になるんだ。だから、過去なんて関係ない。 彼女の過去を聞いた時『辛かっただろうな』って思ったけど、『可哀相』とは思わなかった。『可哀相』なんて、頑張って乗り越えようとしている陽向ちゃんに失礼だよ。 それに、彼女の過去は彼女のモノなんだから『助ける』なんてできないよ。俺には、陽向ちゃんの気持ちが分からないのに……。 だけど、『寂しい』とかなら分かるからね。その時は、傍にいてあげたいって思ってるよ。これから先、みんなでバカやれたら楽しいし、悲しい時はみんなで泣いたらスッキリするだろうなって思う。そのための友達だって思ってる。 それと、俺は陽向ちゃんが強いって思ったことないよ。必死で自分を奮い立たせてる。頑張りすぎだなって思ってる。 陽向ちゃんもさ、みんなと一緒にいて楽しいから、みんなと友達なんじゃないかな。過去から助けて欲しくて、友達になったんじゃないと思うよ。」
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