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「やだ! 離して! あの人を触った手で触らな…………っん!!」
突然、後頭部を持たれてキスされた。
パニックになり蓮の肩や胸を精一杯押すが、優しい口付けからは逃れられない。
そして、不思議なことに、キスを繰り返される度に魔法にかかったみたいに甘く甘く心が溶かされていく。
息苦しくなってきて、ふいに蓮の腕を掴んでしまった。
それが合図だったかのように、深い口付けに変わっていく。
「……っんぁ……ふぁ」
蓮はきちんと分かっている。理解している。
止めないといけないということも、陽向の許可なくこんなことをしてはいけないということも。
それに、傷つけてはいけない。というより、陽向を傷つけたくない。
その気持ちが強いのに、明確に心の中にあるのに、こんなにも気持ちいいキスが初めてで、もっともっと欲しくなる。
陽向の体から力が無くなったのが分かって、ゆっくりとキスを止めた。
そのまま陽向を抱きしめる。
「はぁ……はぁ……先輩、なんで?」
「本当は入学式で見た時から気になってた。でも、晃の好きな奴に手を出すなんて最低だと思ってたんだ。それに、こんなに可愛い子なんだから、男なら普通に抱きしめたいとか思うって。俺が守りたいって思うのも、親友の女で仲間だからって思ってた。でも、手紙の事で頼ってもらえないことが悔しくて……。
今日居なくなったって聞いて息ができなかったよ。このまま会えなくなったらって思うと泣きそうだった。姿を見るまで不安で怖くて生きた心地しなかった。叩いてしまったのは、何もできない自分に、本当の事を言ってもらえないことに苛立っちゃって。ごめんね」
体中から蓮の苦しくも甘い想いが伝わってきて、ふわふわと浮いているみたいだ。
蓮が少し離れ、叩いた頬を撫でてくる。
いつものわた菓子のような甘い笑顔で見つめられる。
「俺、陽向ちゃんが……ううん、ちょっと待ってて」
いたずらっ子のような顔をした蓮に、再度抱き寄せられる。
その格好のまま、蓮はどこかに電話しはじめた。
「もしもし。
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まだ学校だよ。
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あぁ今日寝たからだろ。
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安物のAVみたいだったな。
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晃、話があって電話したんだ。
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俺、陽向ちゃんが好きだ。告白する。
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簡単に奪ってやるよ。
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あぁ、また電話する」
聞こえてきた会話に耳を疑うし、頭も心もこんがらがってくる。
さっき言われた内容に、もしかしてが過っていた。
でも、蓮ははっきりと「嫌いだ」と言っていた。
何を信じればいいのか、今起こっていることが現実なのか、何もかも分からなくなる。
頭が理解するのを拒否しているような感覚に近い。
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