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電話を切った蓮が、陽向と顔を合わせてきた。
「お待たせ。さっき言いかけたこと言うね。俺、陽向ちゃんが好きだ」
優しい甘い声と顔なのに、瞳はとても真剣だった。
言われた言葉がじわじわと体を侵食してきて、陽向の全身が真っ赤になる。
「でも、あたしのこと嫌いって……」
「見られてたんだよね。あれは、百合を釣るための嘘だよ。それに、陽向ちゃんを嫌いだなんて言ってないから」
「嘘。言ってました」
「そんな子嫌いって言ったはずだけど。誰って名前出してないよ」
「屁理屈です。それに、好きでもない人を抱けるんですか?」
「抱けるよ。俺は色んな女抱いてきたし、その間には快楽だけで愛なんてない。でも、さっき陽向ちゃんとキスして初めて心が満たされた。今までそれなりに気持ちよかっただけだったからね」
「最低です。好きでもない人抱いて、その人に好きって嘘ついて」
「最低だって思われても、それが俺のしてきたことだから否定できない」
「あたしへの気持ちも信じられません」
蓮は一瞬辛そうに顔を歪ませたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「陽向ちゃん、本当に好きなんだ」
「先輩は嘘でも好きって言えるし、キスもHもできるんでしょ。どうやって信じろって言うんですか? それに東野先輩と2人で、あたしを騙しているかもしれない。あんなに痛くて苦しい思いなんて2度と嫌です。梨本先輩なんて大きら――
これ以上振り回されたくない。
本当に胸が痛くて苦しかった。
信じて裏切られたら、きっと笑うことができなくなる。
だから、蓮から逃げたくて吐き出そうとした。
でも、その言葉はキスによって塞がれてしまった。
「信じてもらえないのは仕方ないけど、お願いだから大嫌いなんて言わないで。俺は好きで好きで大好きだから」
泣きそうな顔で微笑まれ、優しくとろけるようなキスをされる。
気持ちがぐちゃぐちゃで蓮から離れて考えたいのに、追い討ちをかけるように「どうして拒めないの? どうして発作が起きないの? どうして……甘い魔法にかかってしまうの?」と疑問が浮かび、涙を止めることができない。
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