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「それで、なんでここに来るんだ」
「夕方の屋上はさすがに寒いですし、喫茶店で話せる雰囲気でもないと思いまして」
蓮は、みんなを引き連れて保健室に来ていた。
今日の6時間目と同じように、修一とは無表情で話している。
「お前の家近いんだから、そっち行けよ」
「誰かを上げるのは好きじゃないんですよ」
「陽向は上げるのにか?」
「親父がでしょ。それに、今回は赤川先生にも非があるんですよ」
「兄貴は何も悪くない。ダメだって言われてたのに、私が話したから……」
「俺の予想では、真奈美ちゃんが話し始める前に、止めることができたと思うよ。ね? 先生」
蓮のわざとらしい笑みに、修一は愉快そうに喉の奥で笑った。
真奈美はいうより、大輔たちも耳を疑うかのように呆けている。
「梨本、最高だな。無事に乗り切れたら渡そうと思ってたが、今やる。ここの鍵だ。好きに使え。それと俺は帰るから、戸締まりよろしくな」
修一は、鍵を机の上に置き、本当に出て行ってしまった。
「どういうことだ? 先生は止めることができたってことか?」
蓮は横目で修一が出て行ったことを確認すると、2台のベッドの端に向かい合わせで座るようにみんなを促した。
そして、先ほどの広志の質問に、簡単に返事を返しておいた。
「そういうこと。まぁ、止めなかったってことは、何か考えがあったんだろうけどね。
で、大輔たちは、俺に何を聞いて欲しいの?」
まだ蓮のいつも柔らかい微笑みを直視できない大輔たちは、太ももの上にある自身の手を見ている。
「分からないんだ……陽向ちゃんのことが分からないんだ……」
「俺は、お前の言ってることが分からないよ」
「あの、どうして陽向さんは、笑っているんでしょうか?」
「あんな過去があったのにってこと?」
「あの子が強いのかもしれないけど、可哀相すぎる過去だったから」
「笑う理由なんて、楽しいからじゃないの? それは、俺に聞かれても分からないよ。ずっと傍でいた真奈美ちゃんの方が詳しいと思うよ」
みんなの顔が、更に俯いていく。
広志が、苦しげに言葉を吐き出した。
「どうにかして助けてあげたいって4人で相談したけど、助け方が思い浮かばないんだ」
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