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みんな、蓮の言葉の意味を考え、向き合っているように見える。
蓮は、柔らかく微笑んだ。
「お前らは、難しく考えようとしすぎなんだよ。まぁ、そういう所も長所だと思うけどな」
大輔が、弱々しいがやっと笑みを浮かべた。
「俺が女なら今ので惚れてたよ」
「そうか? 広志には、おかしいって言われたんだぞ」
「広志は、昔から女を見る目ないからね」
「大輔も人のこと言えないだろ。この前まで付き合ってた女、ブサイクだったじゃんか。付き合った理由も――
「おい、広志!」
「どうした? 急に」
蓮が鈍い広志に冷たい視線を送ると、訳が分からない広志は眉尻を下げて首を傾げている。
大輔と広志はどうにか心の整理ができたようで、いつもの遣り取りに戻っていた。
「大輔の話は置いておこう。それに、きっと中身重視なんだよ。それよりも、3人は落ち着いた?」
真奈美・望・美樹が、ゆっくり頷く。
「私、今まで何見てきたんだろう。陽向のこと少しも分かってなかった」
蓮が、優しく真奈美の頭を撫でた。
「さっきのは俺の考え方だから。陽向ちゃんがそう思っているかは分からないよ。それに、陽向ちゃんの1番は、晃よりまだまだ真奈美ちゃんだと思うな。親友ってことに自信持っていいと思うよ」
真奈美は、陽向が蓮と仲がいいことが謎だった。
でも、ここにきて、ようやく分かった気がする。
真奈美の中で蓮は、「絶対に仲良くできない奴」から「女たらしの変態なのに、心の芯が全くブレない変な奴」にランクアップしたからだ。
それでも、心から感謝していることは、声に出して言いたくない。
「いつまでも触らないでよ! 汚れるじゃない!」
「ひどい……さっきので女は誰でも落ちるはずなのに……望ちゃんや美樹ちゃんはどう? 俺に惚れた?」
蓮は、百戦錬磨してきた可愛い笑顔を2人に向ける。が……
「全くです」
「すみません……」
申し訳なさそうに、丁寧に頭を下げられた。
「蓮に落とせない女がいるなんてな。晃に教えないと」
「へー。広志くんは、そんなこと言うんだ。お前の恥ずかしい話、いっぱい知ってるの誰だろうなぁ」
「じょ、冗談に決まってるだろ。言うわけないって」
顔を青くした広志を見てS心に火がついた蓮は、広志の初恋の失敗話をみんなにした。
広志は騒いだが、大輔に抑えられ、蓮の口を塞ぐことができない。
真奈美たちはちょっと引く話に、慰めることも否定することもできないでいる。
そんな真奈美たちの気まずそうな雰囲気に、広志は帰るまでずっと項垂れていた。
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