全校集会

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全校集会

「ねぇねぇ、昨日梨本先輩と帰ったんでしょ? 何もなかったの?」 「何もなかったわよ」 「今日も一緒に来たのに?」 「天と地がひっくり返ってもないわね」 全校集会のため、鞄を教室に置いた陽向と真奈美は体育館に向かっていた。 挨拶の手順の説明があるので、他の生徒たちよりも早めの集合になる。 「スゴく優しい人なんだけどなぁ」 「そういうことじゃないでしょ」 「そうかなぁ?」 「じゃあ、陽向は、あいつに抱きしめられたり、キスされたりしたら嬉しいの?」 「あた―― 「おはよー! 青木、赤川!」 遠くから誰かに呼ばれたけど、周りを見ても誰もいない。 陽向が首を傾げていると、真奈美が遠くを指した。 誰かがピョコピョコ跳ねながら、近づいてくる。 「町田くん?」 「はぁはぁ、思ってたより距離あった……」 「思ってたよりって……ぷっ! 全然見えてなかったよ」 陽向が、声を出して笑っている。 「バッチリ見えてたって。一緒に行こうぜ」 満面の笑みで陽向が頷き、拓真は歯を見せながら微笑んだ。 3人並ぶように立ち、体育館に向かって歩き出す。 「あー、挨拶って緊張する。3分て長いしさ」 「長いよね。噛まずに言えたらいいんだけど……」 「本当にな。噛んだら笑ってくれよ」 「あたしの時、笑ってくれたね」 陽向と拓真は、クスクスと楽しそうに笑ってる。 真奈美は、さっきからずっと人見知りが発動中だ。 「俺、2人と話したかったんだ。折角一緒に生徒会になったんだし、仲良くしようぜ。だから、赤川も少しずつでいいから話そうな」 「そうね、努力するわ」 体育館に着くと、陽向たち以外は全員集まっていて、晃から立位置の説明をされた。 舞台上の右側に会長と副会長とそれぞれの補佐、左側に会計と書記の残り4人が立つ。 会長補佐から順番に挨拶をするそうだ。 陽向が立ち位置場所で深呼吸をしていると、横に立っている蓮が声をかけてきた。 「緊張してる?」 「もちろんですよ」 「会長や会長補佐より目立たないよ。リラックス、リラックス」 「挨拶もあるのに無理です」 「噛んだら1週間はネタにしてあげるから安心して」 「絶対に面白おかしくしてくださいね」 「まかせてよ」 徐々に集まってくる生徒たちが、舞台上右側に立つ4人に見惚れている。 楽しそうに話している陽向と蓮は、どこからどう見ても仲良く見えた。
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