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「はい。蓮様の指示にちゃんと従うことができれば、蓮様が何でもしてくださるという約束です。但し、結婚や子供以外でですが……」
蓮がしている約束が規格外すぎて、色んな意味で蓮が1番怖い人なんだと、陽向たち4人の顔が青ざめていく。
「だから蓮は、陽向ちゃんや真奈美ちゃんに危害を加えるなって、言ってると思ってね」
大輔の予想に、由紀菜は笑顔で頷いている。
「その通りですわ。陽向様も赤川さんも、私を頼ってくださいませ」
「陽向様と赤川さんの違いって、何ですか?」
望の質問は、晃以外の全員が内心奇妙に思っていたことだった。
晃だけが興味なさそうにしている。
「蓮様に、あそこまで言わせた御方ですので。あのお言葉の中には、愛が詰まっておりました」
由紀菜の悲しそうに瞳を伏せている姿を見ると、陽向は居たたまれなくなった。
蓮がどうしてあそこまで言ったのかは、陽向には分からない。さっきも答えを濁していた。
蓮とは、普通に先輩後輩だ。
お昼休みを一緒に過ごすから仲はいいと思っている。
本当にそれだけなのに、失恋と感じさせてしまっている由紀菜の姿に、胸が締めつけられる想いだった。
だって、陽向が蓮との関係を説明したところで、蓮の気持ちを決めつけている由紀菜の慰めにもならないのだから。
「あの、でも滝さん。あたしはあたしですので、““様””付けで呼ばれるのは、ちょっと……なので、できれば、友達になってもらえませんか?」
「私と陽向様がですか?」
「はい。あたしとじゃ嫌ですか?」
「滅相もございません!!」
「じゃ、決まりですね! なので、絶対““様””付けはやめてください」
「分かりましたわ。私のことは由紀菜って呼んでくださいね」
由紀菜はバッチリとメイクをしていて少しキツい印象を受けていたが、柔らかく笑う姿はとても愛嬌があった。
「ところで、滝さん。先ほど梨本くんに言った『生徒会』とは何ですか?」
晃は、由紀菜と蓮の関係も、由紀菜と陽向たちの関係も興味がない。
ただ1点、「生徒会」が答えということが気になっていた。
口角を上げた由紀菜が、人差し指を口元で立てている。
「蓮様以外には、お教えできませんの。それでは、愉快な仲間の皆さま、さようならですわ」
由紀菜はお手本のようなお辞儀をして、陽向に微笑みかけてから、図書館を出て行ってしまった。
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