65人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女と出会ったのは母校の学園祭に行った時。ずっと好きだった先生に告白しようとした矢先、結婚報告を受けて撃沈していた時だった。
そんなどん底の俺に気を遣って、彼女は美味しいケーキを食べさせてくれた。食べ物の力は本当に偉大だ。お陰で失恋の痛みが二割くらいは消えてくれたんだから。
彼女が食べさせてくれたタルトタタンが忘れられず、翌年の学園祭にも足を運んでしまう。そして初めて女の子と連絡先を交換したのだ。
それから数ヶ月。大学進学のために上京した彼女をいろいろ案内したり、一緒にご飯を食べたり、お菓子を作ったり。気付けば一緒にいることが増えていく。
一応先輩と後輩だったが、歳の離れた友達からスタートしているからだろうか、つい普段の自分のままで彼女と接してしまっていた。
波長が合うんだろうなぁ。女の子と一緒にいて楽しいなんて、今まで経験したことがなかった。むしろ緊張して、言いたいことが言えなくなることばかりだったから。
だから最近、ようやく彼女との関係について考え始めた。
俺たちってもしかして、友達以上恋人未満ってやつなんじゃないか⁈ いや、かっこよく言い過ぎか。でも家の行き来もしてるし、友達の枠を飛び出しているような気がする。
出会った頃の彼女--真白ちゃんは、メイド服がよく似合う黒髪の女の子だった。いや、文化祭がメイド喫茶だったからだが、妹って表現がぴったり合う感じの幼くて可愛い女子高生だった。
それが最近になって変わり始めたのだ。メイクをして可愛いさに磨きがかかったし、ファッションだってふわふわのブラウスやニットを着て、ほんわかした柔らかい印象だっま。
これじゃあ他の男だって彼女の可愛いさに気付いてしまうに違いない。そんなことを考えては頭と心がモヤモヤし始めた。
最初のコメントを投稿しよう!