トリュフは甘い夢を見る

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* * * *  気持ちを整理すればするほど、真白ちゃんを好きな自分に気付かされる。  ただ告白するにしても、俺には越えなければならない壁がある。それは失恋してしまうかもしれないという恐怖と、失恋したらもうこの関係には戻れないという不安。  真白ちゃんと過ごしていた当たり前の時間がなくなってしまうことは、心に大きな穴をあけるに違いない。  先生に失恋した時は、すかさず真白ちゃんが慰めてくれたから、そこまで落ち込まずに済んだ。でも今度はその真白ちゃんに告白するとなると、フラれた後に俺はちゃんと立ち直れるだろうか……。  カレンダーを見ながら、明日のバレンタインの二人を想像して、大きなため息をついた。  何もしないで、いい友達関係を続けたっていいじゃないか。わざわざ告白する必要なんてある?  いや、あるよ。だって真白ちゃんと恋人同士になれたらってバカみたいな甘い夢を見ちゃうんだ。  並んで歩く時に手を繋ぎたいなーとか。帰り際にぎゅっと抱きしめて……キ、キスしたいなぁとか!  ベッドの上で悶絶しながら、両手で顔を押さえる。そうだよ、友達のままでいたら、どんどんいけない妄想ばかりを繰り広げてしまいそうだ。  バレンタインは好きな人に告白をする日。日本では女の子から告白のイメージが強いけど、海外ではそうじゃないって聞いたことがある。  フラれて落ち込むかもしれない。それでもやっぱり気持ちを伝えてみよう。もしかしたら、もしかするかもしれないじゃないか!  慌てて家を飛び出した俺は近くのスーパーに飛び込み、板チョコと生クリームとココアてラッピングの袋を買う。それから家に戻って、スマホを見ながらチョコレートを作り始めた。  前に二人でお菓子作りをした時は、下手っぴな俺に優しく教えてくれたっけ。あの時一緒に作って食べたタルトタタンは、今まで食べた中でも一番甘くて美味しかった。  初心者でも簡単に作れると書かれていたトリュフチョコレート。真白ちゃんは喜んでくれるだろうか。  頭に浮かぶ笑顔が現実のものになりますようにと想いを込めながら、出来上がったトリュフチョコレートを袋に詰めた。
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