トリュフは甘い夢を見る

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* * * *  待ち合わせ場所は、ビルの屋上にある庭園だった。夜になるとライトアップがされ、若者たちのデートスポットにもなっている。  とはいえ二人にとっては買い物の合間に休憩をしに来る行き慣れた場所だった。  ベンチに座ると、心臓はドキドキするし、呼吸はおかしくなるし、とにかくずっと緊張している。  ポケットの中に入れたトリュフチョコレートを指で確認しながら、これから言おうとしている言葉を頭の中で何回も練習をする。  ちゃんと言えるかな。声が上擦ったらどうしよう。もしフラれても、出来たら友達でいたいって言うんだ。でも逃げ出さずにちゃんと言えるかな……。考えれば考えるほど不安が募っていく。  その時、歩幅が小さくこちらへ走ってくる足音がして顔を上げると、可愛い笑顔を浮かべて手を振る真白ちゃんが見えた--途端、緊張がピークに達して体がカチンコチンに固まった。 「先輩! お待たせしました!」  なのに彼女の声を聞いて、溶けてしまいそうなくらいニヤけてしまう。いつまでも聞いていたいし、欲張るなら名前を呼んで欲しい--そんな妄想をして恥ずかしくなった。 「大丈夫。俺もさっき来たところ」  俺ってば何を言ってるんだ。もう三十分もここに座っているのに。お陰で鼻先がキンキンに冷えている。 「バイト、お休みさせちゃってすみません」 「ううん、大丈夫だよ。ちょうど入りたいって言う人がいたから、上手く譲れたんだー 」 「良かったぁ。その人に感謝しなきゃ」  わざわざ走って来てくれたのかな。息を切らしながら真白ちゃんは俺の隣に座ると、深呼吸をして息を整える。その仕草すら愛らしくて、きゅんと胸を鷲掴みにされた。 「あのね、今日はバレンタインだから」  持っていた紙袋の中からピンク色の包みを取り出した。
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