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と思っていたけど当日、チョコレート彫刻を目の当たりにすると僕は言葉を失ってしまった。
「スゴい……。まるで生きているみたい……」
展覧会の会場に入ると一番最初に出迎えてくれたチョコレート彫刻はタッくんと五丁目さん。まるで本人がチョコレート被ったみたいにリアルだった。
「そうだねぇ」
僕と一緒に入ったお父さんはキョロキョロしている。いくらなんでも気にしすぎだよ。瑠璃お兄ちゃんのチョコレート彫刻を巨乳にしたくらいでそんなに警戒するの。
「でもちょっと寒いね」
「チョコレートが溶けやすいから暖房はつけないんだよ。前もそうだったし、だからこの時季にやるんだけど」
そう言いながらもお父さんはキョロキョロしている。せっかくの機会だからチョコレート彫刻を楽しめばいいのに。
げたんわお兄ちゃんの筋肉もリアルで僕は唸るしかない。お父さんは変わらずだが、次のチョコレート彫刻で声をあげた。
「香多くんだーー! ロリチョコレート彫刻! ちゃんと貧乳だぁ!」
見るとこそこなんだ。お父さんらしいっちゃらしいけど。
「香多お兄ちゃんもリアルだぁ。これ作った人スゴいなぁ」
「お褒めに預かり光栄です」
「誰!?」
気配もなくタキシードに身を包んだおじさんが僕の横にいた。
「嫌だなぁ。チョコレート彫刻家ですよ。可愛い子が来ていると聞いてね」
「翡翠……もっと離れなさい」
お父さんが僕の手を取って引っ張る。
「おやおや。瑠璃くんのお父さんじゃありませんか? 今回はちゃんと瑠璃くんもつるペタにしましたよ。何なら水着姿もあるかも知れませんね」
「瑠璃の水着姿のチョコレート彫刻!? み、見たい! 行こう翡翠!」
「もうお父さん、もっとゆっくり見せてよ」
「でも瑠璃の……早く早くぅ」
確実に焦るお父さん。本当、瑠璃お兄ちゃんのこと好きだよね。
「あ、翡翠ーー!」
なんてやってるとお仕事中の瑠璃お兄ちゃんが僕らのいたフロアに現れる。
「瑠璃ーー! 翡翠は任せたーー!」
瑠璃お兄ちゃんの姿を見た瞬間、お父さんは次のフロアに駆け出していく。
「え? 親父どうした?」
瑠璃お兄ちゃんがポカンとお父さんの背を見送っているときチョコレート彫刻家のおじさんは僕に小声で声をかけてくる。
「いやいや。マジなロリ巨乳に会えるとは。言い機会です。感触を確かめさせてもらえませんか?」
僕はゾクッとして一気にチョコレート彫刻家のおじさんと距離を取った。
「お前、何をやってんだ!」
瑠璃お兄ちゃんがチョコレート彫刻家のおじさんにかかと落としを食らわせようとしたらチョコレート彫刻家のおじさんの姿がフッと消えた。
「ふふふ。ちゃんと研究したのですよ。破壊力と防御力では瑠璃くん親子に敵わない。それを超えるためにはスピードを磨くしかないとね!」
「なんて無駄な努力……」
つい本音を言ってしまった。
「ちなみに私、チョコレート彫刻家なので略してちょちょうと呼んでください。そしてロリ巨乳の感触を教えてください!」
瑠璃お兄ちゃんがまたかかと落としを食らわせようとするけど、自称ちょちょうはすっと避ける。
このままじゃ触られる!?
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